本歌 捕縄鈎
捕縄は格闘系武術ではないから、とかく敬遠されがちであるが、これは柔術・捕手術に付随する重要な武術の一つである。戦前までは警官も捕縄術を心得ていたが、戦後は手錠に統一されてしまい、捕縄を正確かつ迅速に掛けられる人はほとんどいなくなってしまった。第一、今の警察官は警棒の本来の使用法もまったく知らないのだから仕方がない。
さて、今回紹介する捕縄鈎は武家作法を研究されていた名和弓雄氏が絶賛され、ご自身の次の著書で紹介したいので貸してほしい、と懇望されたが、先年、惜しくも他界されてしまった。この捕縄鈎は鈎の曲がった部分が鍛えられており、刀剣と同じような仕上げが施されている。端分には猪目の刳り抜きがあり、この変哲もない武具にアクセントを添えている。
この捕縄鈎には「正光」の銘が切られているため、余程の自信作であったことがわかる。