『穴澤流長刀表目録』 Anazawa ryu Naginata Omote Mokuroku
『穴澤流長刀表目録』
穴澤流長刀(薙刀)は、その伝播を調べてみると、全国諸藩に伝統の根を下ろしており、間違いなく江戸時代の薙刀における最有力流儀であったことがわかる。
しかし、その内容を見てみると、同じ穴澤流であっても藩が異なれば、内容までもが全く異なっているのは、江戸初期にそれぞれが分派し、各藩で独自の工夫が加えられたことによるものと思われる。
現在、伝えられている新庄藩伝と八戸藩伝を比べても全く別流儀の感である。
今回紹介する伝書『穴澤流長刀表目録』は、どこの藩に伝承した系統か不明である。内容には首を捻りたくなるようなことが散見されるが、ここでは触れずにおこう。
最初に裃を着用した二人の武士が、礼法で薙刀と二刀を合わせている。形は太刀合段、長刀合真位、鑓合真位、真位勝、真位、真位勝の各段から構成されている。
この伝書では、流祖を「穴澤官山」とし、武州河越の住人としている。流系は江戸中期に竹内家に八伝しており、流裔杉七兵衛に至る。伝書は杉から天保十一年に渡辺恵助に授けられたもの。