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国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

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本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

卜伝一つ太刀 Bokuden Hitotsu no Tachi

卜伝一つ太刀

NHKで『塚原卜伝』を放映中である。NHKの時代劇における太刀回り、武術の稽古風景は滅茶苦茶な設定、つまりは間違いだらけで、言いたいことは山ほどあるが、ここで指摘してもあまり意味はない。少なくとも『八重の桜』で放映しているような、木薙刀による試合などは絶対にありえない。

話を戻す。

【塚原卜伝】
塚原卜伝は実父の吉川覚賢から鹿島中古流を、養父の塚原土佐守や松本備前守からは神道流を学び、門下では傑出した存在だった。元服後、諸国回遊を志す。 小田原で剣術指南を務めた後、上洛。御前試合などでその実力を存分に発揮し、東国・近畿・西国に名を轟かす剣豪となる。その一方で次第に死に臨む真剣勝負への恐怖と、殺人者としての剣客の在り方に囚われるようになる。その迷いを払拭するために鹿島へ帰り、千日参籠の末に奥義「一つの太刀」を会得する。 鹿島で備前守に「一つの太刀」で勝利した後は山本勘助に誘われ、新当流を開き、再び旅に出る---。

卜伝はざっとこんな経歴だが、やはりこれまでの研究では「一つの太刀」の実態がわからず、NHKの放送でも随分とぼやかした内容で終わっている。

さてこの「一つの太刀」。これが剣術の一つの極意形であることは確かであり、巷間のいうような心得とか心法といった類のものではないことは明白である。

今、ここにその一つの証左を示そう。これは信州松代藩で江戸時代の初期から伝えられていた新当流の伝授巻である。差出人は落合瀬左衛門公達、被授者は金井杢右衛門、元禄四年(1691)の伝授である。

その内容に「太刀目録」があり、次の九ヶ条を掲げてある。最初の八ヶ条が本体で、最後の一ヶ条は極意と書かれている。

          圓相  向剣  柳枝  稲妻  無待  岩研  常陸帯  卜伝一太刀  清光心

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これは二百以上ある流儀の太刀形から五代目の蒔田喜右衛門頼祐が奥義八之理を編出したもので、これを落合家に伝えたのである。もちろんその中に「卜伝一太刀」がある。

松代藩では新当流(香取新当流ともいい、また神道流とも書く)が落合家に家伝し、幕末に及んだ。今、多くの伝書が地元から散逸している。

研究が進めば、一つの太刀の実態も明らかにされるかもしれない。筆者も現段階では考察を控えたいと思う。いずれ再考する機会があるだろう。諸賢の意見も聞きたいところである。
by japanbujutsu | 2013-03-01 16:14 | 秘伝書の部屋 Secret densho

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