流儀の規則のこと About the rule of the Ryûgi
古流の武術を学ぶにあたっては、弟子が師匠に差し出す神文書(誓詞) の他に、師匠が弟子に対して差し出す流儀の規則というのがある。
ここに二つの例を紹介しよう。
一つは柳剛流(柔術・六尺棒・縄手)の「教授規則」で、次のような規定がある。
第一條 一、我カ手術授ケルハ親又ハ親戚為リト雖承諾有ニ非レハ必ス教ル事勿レ
第弐條 一、我ヨリ授ケル所ノ手術ハ千死一生際ニ非レハ必用ユル事勿レ
第三條 一、我カ門人ニシテ前ノ二條ノ規則ニ違背スル者直ニ放門申付ル事
とある。これなどはまだ、かなり束縛の少ない方であり、次の『関口流法令』になると、かなり厳格な規則となる。
一 弟子取候事人柄見立不信不実之者ニハ教申間敷事
一 他流致稽古人ニ教申間敷事
一 柔居合剣術棒一ツ宛分ケ教申間敷事
(以下省略)
こちらの法令は文化十年(1813)に阿波藩関口流師範の井上齋助成政が差し出したものである。他流を稽古する者には教えてはならない、というのは閉鎖主義の強い現れで、地方の流儀の特徴をよく表している。術の分割伝授も認められていないわけだから、それは厳しい流規である。