仙台藩の秘流 剣徳流捕手 Kentoku ryû torite
仙台藩を代表する柔術の一つに剣徳流捕手がある。
全国的には無名の流派であるが、実は昭和の中頃まで伝承者が存在した。
この流儀が無くなった理由は稽古が厳しすぎたからである。
後方に投げ捨てられた際、頭で受け身を取り、足裏と頭で身体を支えるブリッジの体勢を取る。
そしてクルリと反転して俯きに返り、サッと起きあがる。
首の強健さが要求される上に、頭をゴザに擦りつけるため髪の毛がどんどん抜け落ちる。
これでは若者は近寄らない。
いつしか修行者も絶え、失伝した。
流儀の内容に「立合 三十六箇条」があるが、これは真極流や浅山一伝流など、他の仙台藩伝柔術と同じ取り口である。
これに居取六箇条を修めた後、三格位を学び、当身の伝を受ける。
道具は十手(九寸と一尺二寸)・手之内(四寸)・万力(指環)・打玉(鎖分銅)・捕鈎・六寸縄がある。
この伝書は仙台藩屈指の達人である山崎半也郷誼が天保十五年に差し出したものである。
山崎は大征流捕縄の祖でもあり、多くの流儀に達した。
墓は仙台市の保春院にあるというが、筆者が訪ねたときにはすでに無かった。