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国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

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本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

甲冑着用の武術???

甲冑着用の武術???

甲冑を着用して行う武術のことを「介者武術」、これが剣術の場合は「介者剣術」というらしい。

いつからこんな造語が使われ出したのだろう。

対して平服で行う武術を「素肌武術」、これが剣術の場合は「素肌剣術」というらしい。

これもいつからこんな造語ができたのだろう。

「素肌武者」という言葉を知らないわけではない。

この場合の素肌武者というのは、もちろん甲冑を着用せずに戦場に出る武者のことを意味し、素肌者ともいう。

『盛衰記』に「四国九国の合戦も、素肌武者では手柄が成るまい」とある。

また甲冑を着用している兵士を介者という。

しかし、武術というのは平服になってから発達したものであるから、そもそも介者武術というものはない。

こんなことを書くと、戦国時代にも武術はいくらでもあったでないか、と反論する者もありそうだが、もしそのような愚論を言うのなら、もっと正しい武術史を研究した方がいい。

初期の竹内流は甲冑を着用して行われていたのだろうか、林崎流の居合も当初は甲冑を着用して座したのだろうか、そんなはずはない。

神道流や新当流(卜伝流)でも甲冑を着用した史実はない。

甲冑着用時の戦闘は技術よりも腕力・体力が先行することは周知のことであり、このような戦闘法からは武術は生まれない。

武術は平服を前提としてできている。

だから柔術や剣術の稽古で甲冑着用時の説明をするのはまことにナンセンスである。

曰く、「甲冑の隙間を狙う」のだと。

まずは太刀で敵に大きなダメージを与えてからでないと、甲冑の隙間など狙うことは自爆行為であることを知るべきである。

起倒流鎧組打という特殊な状況下を想定した流儀があるが、これなどは例外に違いなく、普通の柔術の延長上に武士が心得として学んだものである。

現在残っている流派における甲冑着用の武術が江戸時代に実際に行われていたかは大いに疑問である。

では、江戸時代には甲冑着用の稽古は行われなかったのだろうか。

これにも例外はあり、『会津剣道誌』には甲冑を着用して柔術の稽古をしている資料が掲載されている。

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しかし、これらは極めて特殊な例である。

武術は鎧武者時代の戦闘法とは理論・理念が根本から異なり、別なものとして扱う必要がある。

介者剣術だの、素肌剣術だのと言って、原典不明な言葉で偽りの武術史研究をするべきではない。
by japanbujutsu | 2013-08-16 19:54 | 技法研究の部屋 Skill

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