外人への相伝の限界 Limit of the devolution to a foreigner
海外の門人に古流を完全相伝するのは極めて困難である。
否、これまでの海外の古流の様子を見てみると、完全相伝した者など皆無ではなかろうかと思う。
以前にも述べたように、海外で古流を学ぶほとんどの者は技術だけであり、文化までも学んでいる者はほとんど見あたらない。
伝授巻を授かっている者をときどき見るが、その内容を理解している者はほとんどなく、日本語を話すことができないのはもちろん、日本語を読むこともできない。
技術だけを学んでいるのであれば、はっきり言って古武道も現代武道も差異はない。
強いて言えば、その教授システムが違うだけで、変わった名称の形は、かえって面倒なだけである。
もし、外人が古武道を完全相伝しようと思ったら何が必要なのか、ここに箇条書きで示そう。
これは日本人にもまったく同じことが言える。
このブログは海外からのアクセスが多いので、よく読んで理解してほしい。
1 入門に際しては血判を行うこと。 Perform a seal of blood
2 入門に際して師匠に起請文を差し出すこと。 Give a written oath.
3 神道を受け入れること。 Receive Shinto
4 日本語を読み、書き、話せるようになること。 Read Japanese, and write it, and talk.
5 伝書の内容を理解し、書き写して自分の門人に差し出すことができるようにすること。 Do the conferment of the Densho by oneself.
6 日本人名を持ち、諱・花押を持つこと。 Have a Japanese person's name and samurai signature.
これらの一つでも欠けていると武術は相伝できない。
日本人でも一つの流儀の免許皆伝を得るのは並大抵のことではない。
日本の師範の多くは、外人に自己創作した変梃な内容の伝書を与えている。
何も知らない外人はそれをたいへんありがたいと思っている。
古流の立場から見れば、文化的にはまったく意味のない紙切れである。
門人は自分が師匠からいただいた巻物と同じ内容のものが江戸時代にあったかを調べる必要がある。
少なくとも自分の師匠が、同じ伝書をその師匠からいただいているのかを聞く必要がある。
昔はそんなことをしたら即刻破門であるが、今は時代が違うし、文化を継承するためにも正しい情報の入手は必要なことである。
いままでの日本人が、誤った武道・武術を海外に広めたものだから、今は悲惨な状態になっている。
自称十段があちこちにいるし、日本人の師匠を持たない日本武道の創作者もいる。
Tシャツに黒の空手ズボン、地下足袋で道場に入ってくる不躾者もいる。
拳を作って「オッス」というこの上ない無礼者もいる。
何年かかってもいいから正しい日本の武術・文化を伝えたいものである。
彼らが本当に学びたいと思っているものは、その正しい日本の文化なのであるから。