武術稽古記録帳 The notebook which recorded the lesson of the kenjutsu
武術を稽古している人はいくらでもいるが、日本の武術文化を研究している人はほとんどいない。
長い歴史を背負って現代にまで伝えられてきている武術の文化を研究しなかったら、背負ってきた荷物の大半は捨てられていくことになる。
技という籠だけを残して・・・
中身の空っぽな古流・・・
そんなものは最早、古流とは呼べない。
そんなことにも気付かない者が多い。
さて、伝書研究をしていると、いろいろな文書に遭遇する。
その中でも、江戸時代の武術稽古の実態を教えてくれるのが、武術稽古記録帳である。
信州松代藩に塚原卜伝の神道流(松代藩ではこのように表記する)が伝えられた。
師範家は代々落合瀬左衛門を襲名し、幕末に至る。
この落合家の武術史料が松代藩から外に流れ、全国に散逸してしまったのは、すでに取り返しのつかないこととなってしまった。
松代にとっては大きな文化の喪失である。
そして私の手元にもいくつかの落合家文書がある。
大変に貴重な文書で、当時の稽古の様子が事細かに記録されている。
この記録帳は嘉永五年の記録なので、幕末期のものである。
当時の師範は落合瀬左衛門と同量蔵の父子。
その記録には「太刀並打太刀」、「末打太刀」、「相切」などの項目があり、総勢百四人が試技をしている。
相切には試技者名の上に黒星が記されている。
これらがどのような稽古内容なのか、よくわからない。
相切は普通の試合稽古なのだろうか。
後考に待つ。