伝書釈義 神道無念流目録 ①
今回から少しずつ、神道無念流の伝書を読み解いていく。
まずは『神道無念流目録』から。
伝書の相伝順序からすると『神道無念流初巻』、『神道無念流演武場壁書』の次に授けられる三巻目の伝授巻である。
この伝書の詳細(口伝)は、現在どこの神道無念流にも伝えられていないものと思われる。
伝書の冒頭には次のような記述がある。
神道無念流
五加
親拝
摩利支天 未発象 (打仕二本の刀を物打ちで合わせた図) 神拝
師拝
ここで重要なのは「未発象」という言葉の意味であろう。
戸賀崎家に残る『神道無念流剣術免許弁解』によって、その概要を知ることができる。
それによれば、「初本」の解説に、
「初に打合す処、未発の象なり、始は是のみにて、外にわざなかりしを」とある。
また、「二本」の解説に、
「依て受方、其未発を打故、かすんで切返すなり」とある。
さらに「四本」には、
「・・・横に受るにあらず、只かすんで合ずるなり、然るときは皆未発の象に結ぶなり」とある。
そして、その総括として、
「故に五加惣て勝負なし、未発の象に起て、未発の象にとどまる、是全一円の理なり」と結んでいる。
つまり、未発象とは打仕双方が中段に構え、物打で交わる形(象)を表しており、正に描かれた図のとおりなのである。
勝負を決めない武術形はいろいろあり、筆者が相伝している流儀でも浅山流の棒術や天道流の剣術では未発のまま形が終わる。