武術における守破離
現在、伝承されている古流武術において破と離は絶対にあってはならない。
免許皆伝を得た流儀から離れ、新たな流儀を立ち上げるのは、江戸時代の武士がやったことで、その連綿と現代に伝えられてきた伝統ある流儀の内容を勝手に変えることは、江戸時代とまったく異なる現代の環境下でなすべきことではない。
「破」の段階ですでに流儀の掟を犯しているのであり、その形・技を継承してきた歴代の相伝者を冒涜する行為となる。
ちなみにわが協会の制定形になっている日本柔術(甲陽水月流)は、筆者が学生時代に学んだ大和道という柔術が未完成だったために、師の許可を取って新たに完成させたものである。
筆者は免許皆伝を得た流儀を変革したことは一度もない。
武術の稽古、伝承において破はあってはならない。
あるとすれば、流儀の伝承とはまったく別に個々人が勝手に工夫をすることである。
しかし、それは個人の所産であり、流儀の内容とは別に考える必要がある。
そして、その勝手に工夫応用した技を、人に教えることはあってはならない。
破と離はあくまでも個人の中において行われるべきものだからである。
(完)