ブログトップ

国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

japanbujut.exblog.jp

本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

武士は走れなかった???

武士は走れなかった???

かつて江戸時代の武士は「ナンバ」と言って、右手と右足、左手と左足を同時に出して歩いたなどと、人間の身体構造を無視した発言が続出したが、人間の歩き方が昔も今も変わらないのは常識である。

そしてまた、一部の人が言う 「武士は走れなかった」 という説。
そんなバカな話があるはずない。
それに拍車をかけて、ある無知な者は、
「武士は走れないので、いざ走らなければならないときには両手を挙げて走る」
などと偉そうに百姓一揆の挿絵を題材にして説明している。

これは、以前『水月』で説明したことだが、人の走る姿を描くとき、その慌てふためいた表情(危急の場面が描かれることが多い)を表現するための一種の画法であって、これは人間が真に走る姿を描写したものではないのである。
漫画家が「驚いた場面」を描くとき、やはり両手を挙げて描くことが多い。

そして今回紹介する江戸の絵巻に描かれた人の走る様子。

b0287744_21294164.jpg

これを見ればわかるように、両手を挙げている者、両手を後ろに伸ばしている者、左半身の者、さまざまであるが、正しい走法は一つも描かれていない。
物事は近視眼的に捉えると過ちに気付かなく、盲目的に一事が万事となってしまい、正しい考証の眼を失うことになる。
常識を前提に多くの文献にあたり、それを様々な角度から斬り込んでいく。
これが研究というものであろう。




(完)
by japanbujutsu | 2016-09-09 17:12 | 武術論考の部屋 Study

by japanbujutsu