柔術はわが国固有の武術である
江戸時代の柔術の伝書に次のような文がある。
異邦の書に拳法手搏の文字をここ(日本)にてやわらと訓す。大に非也。拳法手搏は今云捕縛の事也と云へり。此柔術は吾神国の古術混沌の妙術にして(以下略)
拳法の文字を「やわら」と訓ませるのは漢文の用例であり、したがって漢碑文に「やわら」の語を記すときも「柔術」ではなく、この「拳法」の文字をよく使う。
拳法・手搏を捕縛のこと、と解するのは早計であり、これはやはり徒手武術全般を指した言葉であると解するべきである。
しかし、中国の土着武術とわが国の武術は、技法的にまったく異なっており、中国のそれを採り入れた事実はない。
ただ、文化的、思想的な影響を強く受けていることは事実であり、それを混同してはいけない。
柔術も剣術も、そして棒術や居合も、すべてはわが国固有の武術である。
これは極めて常識的なことであるが、武術を始めて間もない人たちのために、敢えて記した次第である。
(完)