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国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

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本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

殿中武芸

殿中武芸

殿中武芸などというものが江戸時代に存在した記録はない。
殿中で着用する長袴は、当時の武士の正装である。
殿中では走ってはならず、刀を抜くことは切腹にあたる重罪である。
謀反・刃傷沙汰を防ぐために、殿中差 (短刀) を差し、長袴をはいて歩きにくくしていた。
それと同時に長袴は戦意のないことを表すものだった。
この長袴のために殿中では自分の袴でつまづいたり、他人の袴を踏んでしまったりという失態が絶えなかった。
ちなみに忠臣蔵において浅野内匠頭が吉良上野介を討ち損じたのは、殿中差しと長袴のためと考えられている。

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長袴の浅野に対して、吉良は狩衣という衣装で逃げやすかった。

俗に言う殿中居合に殿中柔術。
殿中において彼我が大刀を差して対座し、敵意を見せたら切り伏せる・・・
これでは殿中血だらけ。
長袴で座してどうして瞬時に片膝が立つのだろう。
「近う寄れ」 と言われても、実際には間を詰めることなど許されなかった時代に、互いに胸倉を掴める位置で対座することなど99%あり得ない。
ましてや三尺三寸に対して相手は九寸五分などという不自然極まりない想定が殿中に存在する余地はない。
武芸という、特殊な状況下を 「想定して」 、 「洗練された技を極める」 稽古を実生活における武家の行動に当てはめてはならない。

何度も繰り返し書いているとおり、武術における形の多くの想定は、芸を演じるための彼我の美的表現方法であって、それを以てストリートファイティングのようなルール無用の喧嘩と同一視してはならない。
武術形は実生活では存在しないような想定の下で、いかに困難な技を極めるか、それが主眼である。





(完)
by japanbujutsu | 2017-05-19 17:40 | 武術論考の部屋 Study

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