天神真楊流柔術 誘活
手元に天神真楊流柔術で最初に授けられるもっとも基本的な活法である 「誘活」 の切紙伝書がある。
これは各階梯の相伝巻 (天・地・人・陰・陽) とは別に授けられる。
その活法の内容は広く知られているので、それをここに述べても仕方がない。
今回はここに紹介する伝書により、これまで語られてきた天神真楊流の歴史が塗り替えられる可能性があることを示しておく。
すなわち、この伝書が出されたのが天保七年であり、その差出人山本末之丞一心斎は流祖磯又右衛門正足の直門である。
何が問題かというと、磯が楊心流を修行したのは文政年間とされており、さらにその数年後、真之神道流を学んでいることから、それが正しいとすればこの伝書は磯が天神真楊流を開く前か、あるいは開いて直後の差し出しということになる。
磯の文化元年出生説も完全にひっくり返る。
伝書は山本の直筆であるから家元制度もまだ整備されていなかったということだろうか。
免許者の号、柳○斎もまだ見られない。
古流では新しい流派であるのに、まだまだ不明な点が多い。
この流派が研究者に恵まれなかったことが原因の一つだろう。
(完)