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国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

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本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

『図解雑学 剣豪列伝』 ①

『図解雑学 剣豪列伝』 ①

『図解雑学 剣豪列伝』(ナツメ社、岸祐二著、加来耕三監修、2004)を読んだ。
概説書なので、人物伝など大まかな記述に止まり、大きな間違いは少ないが、それでも見当違いしている記述がいくつかあり、今後、武術史を研究する人たちが同じ間違いをしないためにもそれらについて述べてみたい。
この本を持っている方は見て下さい。


P.18 変化する武士の意識と剣術
敵を殺すための技術は、竹刀を使った仕合で相手に勝つ技術へと変化していったのである。以後、実戦的な剣は廃れ、衰退の一途をたどることになる。一方で、江戸を中心に町道場は大いに発展・増加し、人気道場の中には全国から門弟を集め、巨大化するものも現れた。

【論評】
この文章は時代の正確性を欠いている。ここでいう「実戦的な」とは戦国時代のこと、少なくとも大坂の陣までのことだろう。ここから竹刀剣術が隆盛するまでの期間はとてつもなく長い。その間の木太刀による形剣術の隆盛期が抹消されている。こんな剣術史があるわけない。「江戸を中心に町道場が発展し」というのも早計で、町道場はむしろ地方の諸藩や農村の方が林立している。
特に埼玉県から群馬県にかけての農村地域には武術の稽古場が無数にあった。
写真は群馬県高崎市吉井町に現存する念流剣術の稽古場傚士館(こうしかん)

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「人気道場の中には全国から門弟を集め」というのも安易な記述である。北辰一刀流など幕末の一部の道場を除いて、江戸におけるほとんどの剣術道場は参勤交代の諸藩士を対象にしたのだから「集めた」わけではなかった。時代背景を踏まえて記述しないと、誤った武術史観を植え付けることになる。





(つづく)
by japanbujutsu | 2017-06-10 17:16 | 武術論考の部屋 Study

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