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国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

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本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

カテゴリ:関口流抜刀 Sekiguchi ryu( 37 )

妙技

武術の世界には妙技というものがある。
妙技は貫禄、味、枯れ、風雅、極致という筆舌に尽くしがたい世界の技を体現したもの。
そう、技が枯れているとか、技に味があるとかいう、その至極の世界。

若者がいくら稽古しても、いくら力が強くても、この妙技を体現することだけはできない。
古流の教えを永年の鍛錬の中で正しく実践し、練武してきた者だけが体現できる。
我が古流の師匠は、今はほとんど黄泉の客となったが、そのすべてが妙技を体現し、筆者にそれを示してくれた。
古流と見せかけて、実は現代人が歴史を捏造し、技を創作した流派では、いくら修行をしてもこの妙技を体現することはできない。
事理が一致しないためである。

先月の稽古で御年79歳になられたわが師匠が、伝えられている関口流抜刀の形のすべてを休憩を入れずに続けて演じてくださった。
それを拝見できるのは、稽古場通いの門下生だけに与えられた特権である。

いやはや恐れ入ったものである。

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そこには真似のできない 「妙技」 があった。

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鍛錬とはすごいものだとしみじみ感じた。




(完)
by japanbujutsu | 2016-12-29 17:37 | 関口流抜刀 Sekiguchi ryu
身の金のこと

関口流抜刀の初本 「抜打先之先 身之金之事」 、二本目 「抜打込三寸之曲尺之事 」にはいずれも「かね」という言葉が入っている。
「金」 も 「曲尺」 も両方 「かね」 と読む。

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双方、いわゆる 「規矩」 のことで、指金を意味している。

武術、特に剣術や居合には真っ向正面切りの技があり、特にこの身の金、規矩を重視する。
これは常に身体の正中線を床面に対して垂直に保てという教えであり、肩を中心とする円運動で切り落とされる剣の動作は、この規矩の上にはじめて成立しうるのである(以上、本来は口伝)。

従って、これを初心者のうちから徹底的に修行する。
最初に学ぶ二つの形に、関口流抜刀の基本と極意が凝縮されている所以である。
基本を徹底的に身につけないと、それは極意に至らない。

わが先々代の亀谷鎮師範の残心の構え。

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顔は真正面を向き(床は見ない)、背筋を伸ばし(前傾しない)、正中線を規矩に保っている。
よくよく工夫すべし。




(完)
by japanbujutsu | 2016-10-19 18:25 | 関口流抜刀 Sekiguchi ryu
立合 初本 「八重垣」


八重垣とは、汚穢や仇を近寄らせないための幾重もの防御という意味。
つまり、八重垣の剣とは、攻撃のための剣ではなく、防御あるいは抑止のための剣である。
この剣とムラクモ剣(草薙剣)は、まったくの別物である。

アマテルからニニキネに三種宝が渡されたとき以来、宮中に保管されるものの、儀礼的に八咫の鏡はカガミ臣に、八重垣の剣は剣臣に渡されるようになった。

時代が下ると八咫の鏡と八重垣剣は、それぞれアマテル神とヤマト大国魂の御霊の象徴となり、寝食を共にすることを畏れた崇神天皇は、八咫鏡と八重垣の剣のコピーを作って宮中に置き、本物はそれぞれ伊勢神宮と大和神社に納めた。

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関口流抜刀立合一本目に「八重垣」があり、香取神道流居合一本目に「草薙之剣」があるのは、こうした神話に基づく日本の古典文化を継承しているからであり、このようなことも知らずにただ技だけを行じていたのでは先人に申し訳ない。
だからこそ、また我々はこうした失いかけた、あるいは失われた故事、伝記をもっと深く学ぶ必要があるわけである。

関口流抜刀の「八重垣」は、立合において敵と正面から出くわしたとき、我は左に身を避け、直ちに抜刀、再度敵前に身を戻して敵の帯を横一文字に斬り、敵が引くところを真っ向から斬り下す、という業前である。




(完)
  
by japanbujutsu | 2016-10-15 17:37 | 関口流抜刀 Sekiguchi ryu
関口流抜刀覚書

流儀の先哲が残してくれた流儀の形・技に関する覚書は、現代にその流儀を受け継ぐ者たちにとっては宝物である。
それは先哲が後学の人たちに対して、流儀の絶滅や技の変質を防ぐために残した方策でもあった。
関口流抜刀の場合、青木師範が写真アルバムで十一本の形を残し、同門の原野一利師範が文章とイラストで同じく十一本の形を残した(下の写真)。

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原野師範は松本政広師範からも伝を得ていて、これで大石永勝が伝えた関口流はほぼ完全なる姿で現代に継承されているわけである。
ところが現代では、故意に流儀の形や技を変え、他の居合流儀に融合してしまっている系統もあり、それらは最早、関口流と呼ぶべきではない。
また、姿勢が酷く崩れ、正中線が立っていない人たちの演武をよく見るが、これらは流儀以前に、武術として失格であると思う。
関口流でもっとも重要な教え 「身の金」 をまったく実践していないのである。
見栄えばかりを追求し、古伝の地味な教えやスタイルを捨てたら、それもまた、古流ではない。





(完)
by japanbujutsu | 2016-10-05 17:49 | 関口流抜刀 Sekiguchi ryu
居合の本義を関口流に見る

居合の稽古は相当の運動量を要し、30分も抜けば両足は感覚がなくなってくる。
ただし、これは真の古流の稽古をした場合であり、腕だけで抜き、切り、納める現代居合道は除いてのこと。

関口流や柳剛流では全体重を刀身に乗せた上に、飛び違いの体変換で生まれた力が加わるため、全身運動を余儀なくさせられる。
柳剛流のわずか5本の形を真剣に抜けば、汗が全身から噴出する。
関口流で11本の形を真剣に抜くと11本目は朦朧としてくる。

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総合武術の柳剛流において、居合を剣術と同時進行で習わせるのには、それなりの理由がある。
まさに古流の居合は気剣体の一致を体得させるためのきわめて重要な「鍛錬」であることがわかる。

ハエが止まるような居合は何年やっても意味はない。





(完)
by japanbujutsu | 2016-08-04 17:05 | 関口流抜刀 Sekiguchi ryu
私が現在も通っている関口流抜刀の稽古場、駿河館。
稽古場の壁二面に巨大な鏡が設えてあり、我が身を前からと横からと、同時にチェックできる。

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しかし、稽古は毎回、師匠とマンツーマンなので鏡がなくてもチェックが入る026.gif

普通の人たちはマンツーマンなんて耐えられないだろうが、私は敢えてマンツーマンをお願いしている。
真伝はマンツーマンの中で伝えられていく。
だから稽古中は一時も気を抜くことはできない009.gif
でも稽古場は不思議な空間である。
いくらでも稽古ができてしまう。

・・・・・・・・とは言え、毎回帰りの車中では稽古着はびっしょり、両腕、両足はガクガクである。
国道246号を走りながら飲むコーラは最高に美味い049.gif





(完)
by japanbujutsu | 2016-06-25 17:24 | 関口流抜刀 Sekiguchi ryu
現存する関口流抜刀の相伝と内容

正真正銘なる関口流抜刀の現存系統は、全国で肥後熊本藩伝だけである。

系統は敢えて伏せるが、その他すべての系統は復元、あるいは創作であり、師から弟子への正しい相伝が行われたのは熊本藩伝のみである。
しかも、その相伝された古伝の形は居合(座形)の十一本だけである。
そして、その十一本を伝えたのが、青木規矩男であった。

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だから古伝の関口流抜刀を今に伝えたのは青木のみであり、青木と同門の他の師範もその門下に免許皆伝者を出すことができなかった。

その青木でさえも新作形を付加しているのであり、現在伝えられているところの青木の流れを汲む諸派で行われている十一本以外の形はすべて昭和の時代に付加されたものである。

その新作形については歴代師範の成果であるので、我々はそれを正しく伝えていく責務があるが、それが江戸時代から相伝されてきた形ではないことを知るべきだろう。

なお、西尾藩伝の新心流居合は幕末の坂田茂平次を以て絶えている。
by japanbujutsu | 2015-10-26 17:34 | 関口流抜刀 Sekiguchi ryu
関口新心流 全形手附伝書

関口流関係の伝書、伝授巻を数十冊ほど所蔵しているが、今回、流儀の全形を記載した冊子伝書三冊を入手した。
形の詳細な手附伝書で、ほぼ全形復元できる。

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その中には居合も含まれ、古伝の再現も不可能ではなくなってきた。

詳細は日本武芸新聞 『水月』 で検討をする。
by japanbujutsu | 2015-10-05 21:06 | 関口流抜刀 Sekiguchi ryu
心正則剣正 身直則剣直

関口流抜刀駿河館道場に第十四代師範青木規矩男直筆による 「心正則剣正 身直則剣直」 の額と掛け軸がある。

今回は額を紹介する。

心正則剣正 
身直則剣直


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心正なれば剣も正なり。
身直なれば剣も直なり。

青木先師の心が書から滲み出ている。
この書を道場に掲げ、青少年を厳しく教育したという。
青木が七十二歳のとき、亀谷師範に贈られた書。
その両側には短冊に書かれた武蔵の歌と居合の極意歌が添えられている。

青木先師の名は「規矩男」、号は「鐵心」。
心も身も名前も号も全部真っ直ぐ、曲がったことを良しとせず、まさに鉄のごとき人であった。

関口流抜刀一本目「抜打先之先身之金之事」の術と理は正に青木先師の言葉そのままの業前である。
形の最後に行う上段横一文字の残心構えは身体を垂直に保ち、胸を張る。

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決して上体が前傾してはいけない。

青木規矩男から関口流抜刀の正式な免許皆伝(仮にこれを完全相伝という)を受けたのは亀谷鎮、清長忠直、木原竹義の三氏だけであり、その他の弟子は同じ免許皆伝でも「一般相伝」だあったと思われる。
後に伝統の業前を変革して容易な動作にしてしまった会派があるのは残念である。
by japanbujutsu | 2015-09-28 19:45 | 関口流抜刀 Sekiguchi ryu
関口流の稽古用居合刀

先に居合の稽古に用いる刀は、稽古専用のものであることを述べた。
だから筆者を含めて日本全国ほぼすべての者が誤った刀で稽古や演武をしていることになる。
我々が稽古で使用している刀は武士が公用で帯刀する大小の「大」であり、鍔には象嵌が施され、化粧鞘を遣い、目貫までもが美術品の格を備えている。
こんな刀を武術の稽古に使うはずがない。
事実、影山流には 『影山流大小拵様』 の伝書があり、流儀専用の刀を用いていたことがわかる。
武道具店もそんな知識はないから、公用刀しか扱っていない。
稽古用の刀が売っていないのだから、我々はそれを特注するしかないのであるが、実はその稽古用の刀も詳しく説明された文献が影山流以外になく、真に困りものである。

ところで、紀州関口流が稽古で使用していた居合刀の図が 『南紀徳川史』 に掲載されている。

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注目点は「無反」の文字であるが、図を見ると反りがある。
これはどういうことだろうか。
関口流の居合は反りを利かせて抜き放つため、無反り刀では抜き付けにかなり無理があると思う。
そして、重要なのは、この絵には鍔が描かれていない。
矛盾しているのは居合形の絵伝書に描かれている刀には鍔が見られることである。
これは理解できない。

後考に待ちたい。
by japanbujutsu | 2015-06-28 17:48 | 関口流抜刀 Sekiguchi ryu

by japanbujutsu