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国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

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本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

カテゴリ:神道無念流居合 Munen ryu( 15 )

古武道免許皆伝数記録保持者 北村益

北村益(きたむら・ます)は、筆者の神道無念流の師、小瀬川充師範の師匠である。

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武術家として以外に政治家、教育家としても名高い名士である。

また、俳諧・詩文・狂歌・川柳などでそれぞれ別の号を持つ風流の人でもあった。

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                         八戸城跡に建つ北村益景仰碑

明治元年、八戸藩士の家に生まれ、少年時代は病弱だったが、16歳の時北辰一刀流剣術を鈴木彦四郎に学んだことが大きな転機となる。

以後、大坪流馬術を堀野茂助に、富田清見流棒術・四条流礼式を前田武に、加賀美流打毬・穴澤流薙刀・川崎流柔術を伯父女鹿宗彬に、甲州流軍学・溝口流居合を岩山高憲に、高巣流縄術を細川来作に、通神流剣術を山本鎮元に、神道無念流剣術居合・柳生流捕者形鎖鎌十手鉄扇半棒術を前田利見に、一当流柔術は六里の道を通って名久井岳麓の日澤義直に学んで、これら全ての免許皆伝を得た。

旧藩伝承の正統武術を正式に入門・修行し、悉く免許皆伝を得たのは、明治維新後の武術家としては、その記録保持者であろう。

明治18年、旧藩文武の師範栃内吉忠を名久井山麓に訪ね、神儒仏にキリスト教、西洋哲学、経済などを学ぶ。

明治21年、国粋保存主義の基礎教育を施す八戸義塾を開設。

明治22年、尊王心に儒道、士道を基とし、実学に農業実習を兼ねた私塾八戸青年会を開設する。会の組織は幼稚園から女学校、中学校まで含む大学園式で、北村が独裁、士族の子弟を中心とした禁欲的な教育が行われた。

以後、公開図書館開館。新兵予習会設立。八戸消防組頭、八戸新聞社社長に就任。

明治40年には八戸町長となった。

北村の武術は彼の他界によって悉く絶伝した。

しかし、そのうちの神道無念流居合が、小瀬川充師範によって現代まで八戸に残ったのである。
by japanbujutsu | 2013-09-01 18:18 | 神道無念流居合 Munen ryu
流祖 福井兵右衛門嘉平のこと

神伝不動流の歴史を解説したHPに次のようなデタラメな記述がある。

このような捏造された歴史は早急に訂正しておかないと、他流派にまで大きな迷惑になる。

以下、その要略 ( 『武芸流派大事典』 の記述に脚色を加えている)。

伯耆国大山、名和神社宮司の重村正秀は元禄十五年、十八才で文武の達人として有名であった。正秀の祖先は、延元三年、尊氏と戦い討死。名和一族の重村掃部允五郎兵衛尉が弟、五郎兵衛正種の十二代の末孫で、家伝の『鞴韜彪底之巻』一子相伝を得、有名であった。後、下野国宇都宮で農家に一泊。その家の息、十八才の善平と言う者の凡ならぬ眼光・態度に感じ、武道を教えるに、一を教え十を悟り、善平少年を連れてまた諸国を修行する。出羽朝日岳、鼠谷で吉平と言う少年が小石で小鳥を打ち落とすのを見て感じ、この吉平も門人に加えて伯耆国に帰り、三年後、両青年に極意を伝授する。善平は宇都宮で福井兵右衛門善平と名乗り、神道無念流と称し、剣槍体術の祖師となり、吉平は朝日奈五郎吉平と名乗り、神伝不動流の祖師となり、剣棒槍体術を世に広めた。

まず、神道無念流の祖、福井兵右衛門の諱は嘉平であり、善平ではない。しかも初名は川上善太夫という。

また神道無念流は以下の伝書に書かれているとおり、純粋な居合・剣術の流儀であり、槍術や体術は含まれていない。

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福井の師は一円流の野中権内 (戸賀崎家の伝承では牧野円泰をその師としている) であり、重村正秀なる人物は神道無念流にはまったく関係のない者である。

福井は一円流を極めた後、信州飯縄権現の夢想で老翁から居合の秘伝を授けられて開悟し、神道無念流を創始した。

よって神伝不動流なる武術ともまったく関係がない。
by japanbujutsu | 2013-07-27 19:10 | 神道無念流居合 Munen ryu
神道無念流と警視流

明治時代に制定された警視流居合の二本目に神道無念流立居合から採用された「無双返し」の形がある。

神道無念流に後方の敵を振り返って斬る形は三本目しかないので、その三本目が採用されたことになる。

今、神道無念流の伝書からその三本目の形を抜粋してみる。

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第参
右足より三歩進み、左肩より後を見、左へ廻りて右足を踏み込み、抜き付け、左足より進んで右足に斬り、霞んで左足を進めて右足を開き、右方の敵首を斬る


警視流無双返し
右足より前進中、右足が付くとき、廻れ左をなし、右足を出すと同時に刀を抜き、右上に切り上げる(左手は柄を握る)。左足を進め刀を左から頭上に廻して右足を出して正面を斬る。左足を前に出して上段に構え、残心。以下納刀所作略。


警視流にはこの最後の肝心な首を斬る動作が抜けている。警視流は五本の形をすべて同じ理合にしてしまっているため、古流のそれぞれの特徴が薄れてしまっている。神道無念流は抜刀や納刀の所作まで採用されているため、まだ良いと思うが、他の四流儀はまったく原形を保っていないのではなかろうか。
by japanbujutsu | 2013-01-19 22:44 | 神道無念流居合 Munen ryu


八戸藩伝神道無念流は立居合十二本のみを伝えている。礼式を座して行うが、独特の所作を持っている。

形の特徴は、他藩の伝と異なり最初に三歩出る動作がない。

体構えは東北諸藩の武術によく見られる一重身の「角体」で、歩幅は広く、完全に撞木の足構えとなる。「踵を上げて正面体で打つ剣道」を修行した者はなかなかこの動作ができない。

斬りつけはすべて袈裟であり、他藩のような正面斬りや真横の胴斬りもない。「エイ」「ヤー」「トー」の掛け声も勇ましい。
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一本目 前
二本目 前
三本目 後
四本目 前後
五本目 前から右左
六本目 前から右
七本目 前から左
八本目 左向きから右
九本目 前
十本目 前
十一本目 後退
十二本目 前

合神承伝流はこの十二本の裏形となる。


                                   写真は小瀬川充師範による四本目


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                        小瀬川充師範の気力漲る迫力の居合


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             免許皆伝者だけに授けられた小瀬川充師範直筆の『神道無念流明筆』
by japanbujutsu | 2012-11-10 22:22 | 神道無念流居合 Munen ryu
八戸藩伝神道無念流居合

神道無念流は一円流剣術を学んだ福井兵右衛門によって開かれた剣と居合の流儀である。信州飯縄権現の夢想で開眼し、五加五行、非打十本、立居合十二剣、統合二剣を案出して神道無念流を立てた。二代目は戸賀崎熊太郎暉芳が継承し、江戸と現埼玉県の清久村で教授した。

戸賀崎熊太郎暉芳の門人でもっとも傑出したのは岡田十松吉利である。斎藤弥九郎、藤田東湖、永倉新八、江川太郎左衛門、渡辺崋山、金子健四郎など、皆岡田十松の門人である。

八戸藩には岡田十松吉利の子、十松利貞に学んだ佐藤万次郎が伝えた。佐藤の後は、中里好環、前田利見と相伝し、明治期の達人北村益に至る。北村は昭和戦前まで精力的に活動し、古武道大会にも率先して出場し、八戸藩の武術を披露した。

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                      岡田十松利章(利貞の次代)が差し出した伝書


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佐藤万次郎から中里好環に差し出された伝書の著名部分








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      佐藤万次郎が差し出した『神道無念流剣術秘伝巻』-武士の刀に対する心得が詳細に記されている



会長の恩師小瀬川充師範は北村益から立居合の免許皆伝を授かり、全日本居合道連盟に加盟して、その普及に尽力された。なお、小瀬川師範は自ら工夫した居合を合神承伝流と称した。



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会長が小瀬川師範から授けられた教授の推挙状




現在、全国には数派の神道無念流が伝えられているが、八戸藩伝はそのいずれとも大きく趣を異にしている。



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北村益                                           小瀬川充師範


系譜

流祖 福井兵右衛門嘉平
二代 戸賀崎熊太郎暉芳
三代 岡田十松吉利
四代 岡田十松利貞
五代 佐藤万次郎成方
六代 中里好環
七代 前田利見
八代 北村益
九代 小瀬川充
十代 小佐野淳

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                         松代藩文武学校で演武する会長




 
by japanbujutsu | 2012-11-06 20:25 | 神道無念流居合 Munen ryu

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