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国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

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本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

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剣術における「切り結ぶ」技法の意義

剣術には「切り結ぶ」という技法がある。

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剣術で双方が正眼に構えたときの間合いは六尺が基本である。

だから切り結ぶという互いの「物打」が交わる間合いはそれより少し詰まる。

この切り結ぶという技法は、剣術の形において、互いに手の内を確認し合い、仕太刀が攻撃の間に入る序として行う動作である。

決して攻撃や防御の間合いではない。

ここが大切である。

この未だ、双方が攻防の間に入らず、得物を打ち合う「切り結び」は棒術では「合(ごう)」という。

たとえば、打太刀が攻防の間合いに入り(仮に左足を前とする)、仕太刀が袈裟にその左肩(首)を切ってきたとする。

そのとき、打太刀は左足を引いて切り結ぶ動作となる。

この時の切り結ぶ動作は、仕太刀が「切る」という動作を起こしているのであり、攻防の技法として成立する。

しかし、剣術形などに見られる双方が六尺以上離れた状態で、最初から切り結ぶことを前提として切り結ぶのは、剣術形を構成させる序の動作にすぎないのである。

だからこの双方が離れた状態で切り結ぶとき、仕太刀がその切り込みを外して攻撃をするというような技法は剣術の技として成立しない。

敵の攻撃が自分に届くからそれを外し、あるいは受け流し、受け止めて反撃するから意義がある。

そしてもう一つ。

敵を切ろうとしたとき、我の剣がその軌道の中間地点を過ぎた場合、軌道修正はできない。

双方が切る間合いに入らず、互いに相手のいない場所で切り結ぶのは、互いに仮想の敵を切る動作でもあるわけだから、その途中で軌道修正をして攻撃をするというのは非常に不合理であり、剣の速度は極端に失速する。

形における技の意義を取り違えると、武術の真意はまったく伝わらない。
by japanbujutsu | 2013-10-29 21:50 | 技法研究の部屋 Skill
平成25年度 松代藩文武学校 第16回秋の武術武芸会

平成25年10月26日、長野県長野市にある松代藩文武学校において、演武会が開催された。主催は松代藩文武学校武道会。
午前中まで台風の影響で悪天だったが、午後は雨も止み、無事に演武を行うことができた。

参加武術

松代藩無双直伝流
北辰一刀流兵法
田宮流居合術
新陰流兵法
戸山流居合道
信濃無外流居合
神道夢想流杖道
一心流鎖鎌術
全日本なぎなた
荒木流抜剣(山根章)
穴澤流薙刀(山根・会長)
神道無念流立居合(会長)

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                                 荒木流抜剣

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                                 穴澤流薙刀
by japanbujutsu | 2013-10-28 19:54 | 演武会・講習会 Seminar
現存する剣術の流儀

剣術は日本武術の核であり、また世界に誇る日本刀を使った格式高い武術でもある。

江戸時代、その流儀の数は星の数に匹敵するほど存在した。

しかし、明治維新でその9割以上が失われ、第二次世界大戦でそれがさらに半減した。

現在残っている流儀は大変に貴重であり、日本が世界に誇る民族文化遺産である。

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しかし、日本人のほとんどは、その優れた文化遺産のことをまったく知らない。

それは何回も言うとおり、日本の行政と教育に責任がある。

【現存流儀】

1 小野派一刀流  東京
2 新陰流  東京・埼玉・愛知・新潟他
3 鞍馬流  東京
4 溝口派一刀流  福島
5 甲源一刀流  埼玉・兵庫
6 念流  群馬
7 荒木流  群馬
8 香取神道流  千葉・神奈川
9 鹿島新当流  茨城
10 立身流  千葉
11 駒川改心流 富山・石川・埼玉
12 関口流  和歌山
13 雖井蛙流  鳥取
14 タイ捨流  熊本
15 鞍馬楊心流  鹿児島
16 二天一流  全国
17 心形刀流  三重・東京
18 雲弘流  熊本 
19 力信流  静岡・山梨・三重・岡山
20 天道流  京都・福岡・山梨・東京他
21 卜伝流  青森
22 竹内流  岡山
23 柳生心眼流  宮城・栃木
24 神道無念流  東京・山口他
25 北辰一刀流  茨城・東京・長野他
26 知心正流  東京
27 無刀流  石川
28 示現流  鹿児島・茨城
29 野太刀自顕流  鹿児島
30 神道流(神道夢想流杖に併伝)  全国
31 天然理心流  東京
32 深甚流  石川
33 直心影流  東京他
34 寺見流  熊本
by japanbujutsu | 2013-10-24 21:36 | 武術論考の部屋 Study
現存する十手術・短棒術の流儀

現存する十手術・短棒術の流儀はいたって少ない。

それだけに現存流儀の存在は貴重である。

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昭和以降の創作・復元流儀は対象外。

現存する十手術

1 一角流  全国
2 駒川改心流  富山・石川・埼玉
3 広島伝渋川流  大阪  
4 渋川一流  山梨・広島
5 甲州陣屋捕手術  山梨

現存する短棒術

1 浅山一伝流大倉派  全国
2 渋川一流  山梨・広島
3 柳生心眼流  宮城

随時、加筆していく予定。
by japanbujutsu | 2013-10-23 23:30 | 武術論考の部屋 Study
現存する柔術の流儀

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昭和になってからの創作・復元流儀は除外。
武田惣角系大東流以外に「合気」を名乗る流派はすべて除外。

1 大東流  全国
2 諸賞流  岩手
3 柳生心眼流星派  宮城・東京他
4 柳生志限流  岩手・山梨
5 真極流  宮城  絶伝か。
6 神伝実用流  宮城  絶伝か。
7 仙台藩伝浅山一伝流  山梨
8 禅家流  宮城  絶伝か。
9 大倉系浅山一伝流 東京・神奈川他
10 為我流派勝新流  茨城
11 荒木流  群馬
12 気楽流  群馬・埼玉
13 真蔭流  埼玉
14 三神荒木流  埼玉
15 天神真楊流  東京
16 柳生心眼流星野派  栃木 
17 中澤流  山梨・大阪
18 片山心動流  新潟
19 四心多久間流  富山・埼玉
20 長尾流  石川
21 関口流 和歌山・三重・東京  
22 広島伝渋川流  大阪
23 高木流  兵庫
24 本体楊心流 兵庫・大阪
25 心月無想柳流  兵庫
26 渋川一流  広島・山梨
27 竹内流  岡山
28 司箭流  岡山
29 四天流  熊本
30 立身流  千葉
31 鞍馬楊心流  鹿児島
32 柴真揚流  山梨
33 起倒流  岡山他
34 天武無闘流  愛知
35 今真流  大阪
36 双水執流  東京・福岡
37 神妙流  兵庫
38 石黒流  千葉
39 柳心介冑流  北海道
40 夢想流  宮城  絶伝か。
41 為我流  茨城
by japanbujutsu | 2013-10-21 22:21 | 武術論考の部屋 Study
現存する鎖鎌の流儀

戦前までは異種試合に剣対鎖鎌という番組が組まれていたことがある。

しかし、近世において鎖鎌を実戦で使用したという例を寡聞にして知らない。

あくまでも武術の修練として行うもので、典型的な非実戦的武術である。

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                             北信伝無双直伝流鎖鎌

以下は現存流派。

1 一心流  全国  
2 直猶心流  全国  
3 卜伝流  三重  
4 正木流  静岡
5 荒木流  群馬
6 渋川流  大阪
7 渋川一流  山梨・広島
8 天道流  京都・福岡・山梨・東京
9 武甲流  東京
10 気楽流  群馬
11 心鏡流  石川
12 金輪流  福岡
13 柳生流  静岡・神奈川
14 竹内判官流  大阪
15 鉄仲流  東京
16 心月無想柳流  兵庫

随時、更新します。
by japanbujutsu | 2013-10-20 20:32 | 武術論考の部屋 Study
現存する棒杖術流儀

棒術は柔術に付随して行われる場合と、剣術に付随して行われる場合とがある。前者の場合、多くは棒対棒、後者の場合は棒対剣の組み合わせが多い。

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以下、復元・創作流儀は対象外とする。

1 無辺流  岩手
2 柳生心眼流  宮城・栃木  仙台系と江戸系がある。
3 神道夢想流(杖)  全国  全日本剣道連盟が杖道として採用。
4 霊山竹生嶋流  福島
5 椿小天狗流  富山 埼玉  杖を使う。
6 無比無敵流  茨城  杖術と称しているが、棒を使う。
7 九鬼神流  全国  六尺棒と半棒がある。
8 水鴎流(杖)  静岡
9 竹生島流  山形・長崎
10 荒木流  群馬
11 気楽流  群馬・埼玉
12 香取神道流  千葉・神奈川
13 渋川流 大阪
14 浅山一流  山梨(筆者)・広島  渋川一流柔術に併伝。
15 力信流  静岡・岡山・三重・山梨(筆者)
16 竹内流  岡山
17 養心流  岡山
18 今枝新流(杖)  岡山
19 楊心流(半棒)  広島
20 長谷川流  兵庫 奈良
21 今川流  山梨(筆者)
22 村岡兼流  山梨(筆者)
23 柳剛流(杖)  山口 山梨(筆者)他
24 鞍馬楊心流(半棒)  鹿児島
25 天道流(杖)  山梨(筆者) 
26 影山流(杖)  宮城
27 心月無想柳流  兵庫
28 無比流兵杖術(無比無敵流、田谷の棒術)
by japanbujutsu | 2013-10-19 18:32 | 武術論考の部屋 Study
現存する居合流派

昭和戦前の演武記録を見ると、絶伝してしまった居合の流儀を散見する。

今、日本人として、日本の文化に興味のない人間があまりにも多すぎる。

熱しやすく冷めやすい現代人に、長い修行を必要とする古武道など、不向きなのはわかるが、それではあまりにも情けないのである。

人間形成などという言葉は今の若者には通用しない。

懸命に古武道を学ぶ外国人を見るにつけ、もはや日本人とは顔だけだ、と思うこともしばしば。

なぜこんな脆弱な国になってしまったのだろう。

すべては頭でっかちのお役人さん達の責任である。

現存している流儀でも、団体に加盟して「制定形」「刀法」とやらを学ぶに付け、肝心の古流までもが、その特質を失い、形の変質が甚だしい流儀も多い。

たとえば、英信流でも細川義昌の写真を見る限り、今の人たちとの抜刀における迫力の違いが容易に判断できる。

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さて、本日は現在まで命脈を保っている居合の流儀を紹介する(明らかに復元・創作とわかるものは除外)。


1 林崎夢想流(神夢想林崎流)  青森・東京・新潟。山形は絶伝か。
2 影山流 宮城・福島。 失伝した形が多い。
3 無双直伝英信流・夢想神伝重信流・長谷川流・大森流  全国。
4 夢想神伝流  全国。 ただし古流に含めるかは問題あり。
5 伯耆流  熊本・大阪他。
6 関口流  和歌山・熊本・岐阜・静岡・山梨・東京・茨城・愛知他。
7 田宮流  神奈川他。正式には田宮神剣流。
8 制剛流(新陰流)  愛知他。
9 新影流  福岡。
10 民弥流  富山・石川・埼玉他。
11 新田宮流  茨城。
12 香取神道流  千葉・神奈川・静岡他。
13 神刀流  東京他。
14 荒木流  群馬・山梨。
15 荒木無人斎流  兵庫。
16 柳生心眼流  愛知・宮城。
17 竹内流  岡山。
18 興神流  石川。
19 貫心流  島根。
20 水鴎流  静岡。
21 神変自源流  兵庫、埼玉。
22 円心流  大阪他。
23 心形刀流  三重・東京他。
24 知心正流  東京。
25 無外流  全国。
26 立身流  千葉。
27 神道無念流  青森・東京・埼玉・兵庫・山口・長崎他。
28 双水執流  東京。
29 信抜流  広島。
30 自剛天真流  福岡。
31 初実剣理方一流  岡山
32 鐘捲流  岡山
33 竹内判官流  関西

今後、確認された流儀があるときには追加していく。

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                              絶伝した鹿島神道流刀抜
by japanbujutsu | 2013-10-18 21:38 | 武術論考の部屋 Study
現存する薙刀流派

かつて筆者は『秘伝古流武術』という雑誌の創刊に関わり、創刊号からしばらくの間、三つの記事を担当していた。

そして三本のビデオや復刻本も出した。

しかし、しばらくして出版社の悪意に満ちた詐欺紛いの行為に遭い、以後手を切った。

現在、まことに残念ながら、正しい古流武術を紹介する書籍・雑誌がない。

幸い、このブログの記事が諸賢の乾いた咽を潤しているようで、アクセス数もすごい数値を示している。

そこで今回から真面目な後学のために現存する古流武術の情報を少しずつ開陳していきたいと思う。

気になる流儀があれば各自で調べてみると良い。

最初は現存する薙刀の流儀から。

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①天道流 全日本なぎなた連盟で採用しているので、全国に広がっているが、古流として稽古している者は
ほとんどいない。

②穴澤流 筆者が新庄藩伝を継承している。

③直心影流 天道流とともに競技化を図ったが、天道流勢力に押されて、現在では習得者が激減している。

④香取神道流 千葉と神奈川に現存。

⑤念流 群馬に現存。

⑥荒木流 群馬・神奈川に現存。長大な長巻を使う。

⑦直元流 青森と東京に現存。長大な男薙刀を使う。

⑧水鴎流 静岡に現存。

⑨無辺流 岩手に現存。

⑩肥後古流 熊本に現存。

⑪戸田派武甲流 東京、兵庫に現存。珍しい鈎薙刀を使う。

⑫楊心流 広島に現存。完全に女薙刀に変容している。

⑬清和流 福岡に現存。

⑭駒川改心流 富山、石川、東京、埼玉に現存。

⑮渋川流 大阪に現存。

⑯立身流 千葉に現存。

⑰竹内流 岡山に現存。

⑱心形刀流 三重に現存。

だれかリーダーが現れて、全国古流薙刀演武会が挙行できれば素晴らしいと思う。
by japanbujutsu | 2013-10-17 21:02 | 武術論考の部屋 Study
日常生活に「ナンバ歩き」はあり得ない

江戸時代までの人々は皆、ナンバ歩きという歩行法をしていたというが・・・。

そんなことはあり得ないのではなかろうか。

このブログに来る人たちに今さら「ナンバ歩き」の説明は不要だろう。

簡単に言うと右手右足、左手左足を揃えて出す歩行方法である。

これは特殊な状況下にあった人たちが用いた特殊な歩法であって、日常的にこんな不自然な歩行を行うはずがない。

たとえば右手右足が同時に前に出るということは力を一点に集中させやすいために武術や農作業で用いられる。

また歌舞伎や祭礼の踊りなども動作を大きく力強く表現するために、この歩法を用いる。

特に踊りの場合には、この歩法が動作やリズムを整える働きがあり、また狭い間隔で並ぶ前後の人の動作を邪魔しないという利点がある。

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飛脚もナンバ走りを使っていたなどと言っているが、飛脚は荷物を持っているために身体を極力振らなかっただけで、ナンバ走りなどという走法を用いていたとは到底考えられない。

江戸の様子を描いた絵図に右手右足が同時に出ている姿を見かけるが、これも特殊な場合(大名行列など)
の隊列歩行である。

また絵師が人々を描く場合の一つの表現方法とも思われる。

たとえば火事などで家から飛び出してくる人を描く場合、両手を上に上げている場面をよく見るが、実際にそんな格好で逃げる者はいない。

これは驚いて焦っている様子を誇張するための絵師による非現実的仮想表現の一つと考えなければいけない。

この歩法を江戸時代まではだれもが日常的に用いていたと主張する人たちは、一様に「ナンバ歩きが廃れてしまった原因は明治時代の徴兵制の折に西洋式歩行を強要されたためである」と口を揃えて言う。

そんなバカな話しはない。

何も持たずに、あるいは銃を所持して歩くのに、普通の歩行(右足左手、左足右手が出る)は体のバランスを保ち安く、エネルギーの放出も少ないのである。

日常生活における人間の行動則がたったわずかな期間の「明治維新」によって変わってしまうなんてことは常識的に考えてもありえないのではなかろうか。

江戸時代の人だって何も持たなければ、現代人と同じ歩き方であったはずであり、危急の場合には早く走ることだってできたに違いない。

考え方というのはいろいろあってしかるべきである。

従来論に囚われて、それを鵜呑みし、受け売りばかりしていたら、真実は決して見えてこないだろう。

陸上競技を専門とし、武術史研究を精力的に行っていた山本邦夫教授の著書『埼玉武芸帳』の「あとがき」を読まれると良いだろう。
by japanbujutsu | 2013-10-13 17:20 | 技法研究の部屋 Skill

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