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国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

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本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

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柔術技法の研究 『拳法図』 その1 袖車

東北大学狩野文庫に大変貴重な楊心流系柔術の絵目録『拳法図』が蔵されている。

今回はその中から、興味のある技法を抽出して紹介していきたいと思う。

まず、この伝書の大きな特徴の一つは、単なる形の羅列ではなく、一つの形に対して多くの技術的バリエーションを紹介していることである。

楊心流を代表する形「袖車」に対しても、非常に多くの変化技を図示していて興味深い。

楊心流オリジナルの袖車は、座している相手の前から進んで背後に回り、両手で襟を掴んで締める技法である。

『柔術剣棒図解秘訣』には次のような挿絵で天神真楊流の袖車が説明されている。

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そして『剣法図』では、烏天狗によって、ほぼ同様の締めによる極めの場面が描かれている。

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そして、変化技の一つとして、立位のままで片羽締めに極めている場面の図もある。敵は太刀を持っているので太刀捕りの技法であることがわかる。

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このように一つの形に対して、さまざまな変化の想定を学ぶことは、応用力の養成や変化への対応を知る上で、武術のみならず、さまざまな社会環境の上でも非常に大切なことである。
by japanbujutsu | 2014-01-30 22:22 | 技法研究の部屋 Skill
古武道を学ぶ目的は何か?

現代人が古武道を学ぶ目的はおよそ次のようなことに集約される。

1 生涯続けることのできる稽古事をしたい。
2 時代劇や幕末のヒーローに憧れて。
3 現代武道には体力的についていけないから。
4 刀剣が趣味。
5 強くなりたい。
6 競技武道より伝統武道。
7 精神生活を充実させたい。
8 変わったことがしたい。
9 近くにたまたま道場があったから。
10 人に誘われて。

このくらい列挙すれば十分だろう。
しかし、ただ強くなりたいのならボクシングやレスリングをやった方がいい。「強い」の定義はいろいろあるが、喧嘩でまけないようになりたいのだったら、古武道なんかまったく役に立たないからやめた方がいい。第一、習得するのに年数がかかりすぎるので、実用的ではないのである。

近くにたまたま道場があったから、というのはよくあるケース。これもダメ。なぜ、その流儀を選んだのか、という理由がまったくないからである。もっと言うと、古武道を修行している日本人のほとんどの者が、自分の流儀にまったく関心がないのである。不思議な現象だ。

古武道が競技武道と決定的に違うのは、伝統の重みである。古武道は江戸時代の武士によって体系づけられた芸術で、武士の体育的学問である。その歴史に興味がないものが「流儀」を学んで何の利があるというのだろう。

古武道から歴史と文化を取ってしまったら、それは現代武道と変わらないものとなってしまう。
だから多くの者は現代武道と古武道の、その違いがわからないまま、ただ稽古を続けている。

中には「形がない古武道」があるそうだが、それははっきり言って古武道ではない。形がなければ受け継ぐ技術が存在しないのだから。形は古武道の本体であり、神髄であり、最重要な要素である。これなくして古武道はありえない。

一つの流儀の免許皆伝を得て、流儀の歴史や伝書研究をなし、流儀のすべてを受け継ぐ者、これが流儀の後継者になりうる資格であろう。

中には、流儀の歴史や伝書、あるいは他流の研究などをすると、師範や同門の先輩たちから白い目で見られる等の道場があると聞くが、研究することのどこがいけないというのだろう。そんな素晴らしい心がけのある者は、それこそ流儀の逸材ではないのか。

出る杭を打つような流儀や道場は、即刻退会した方がよい。
by japanbujutsu | 2014-01-28 19:40 | 武術論考の部屋 Study
中澤流護身術 七段 暴漢捕縄術三法方式 
第一条 立躰捕り左方式


形の紹介はこれを以て終了する。これらの形を修めた後、様々な口伝を受け、多人数捕りなどの教伝を経て免許皆伝となる。

我は左手で敵の左手首を捕る。

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敵の背後に回って腕を背に固めて引き倒す。

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捕縄の輪を敵の手首に移して引き締め、右手も背後に固めて両手を捕縛する。

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by japanbujutsu | 2014-01-27 17:04 | 中澤流護身術 Nakazawa ryu
中澤流護身術 六段 真剣白刃捕四法方式 
第三条 匕首切込み膝堅め


こちらは大東流柔術には見られない技法であり、中澤流独特の捕り方をしている。明治期まで甲州に伝播していた渋川流柔術の影響を受けているか。

敵が匕首で切り掛かるのを我は左手で受け止める。

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そのまま敵の手首を掴み、右足を敵の右足後方に進め、右手は喉に当てる。

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そのまま仰向けに倒し、敵の腕を極めて固める。

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by japanbujutsu | 2014-01-26 17:40 | 中澤流護身術 Nakazawa ryu
中澤流護身術 五段 四方投げ八方方式 
第二条 応用左右左方式


中澤流護身術は、明治の末期から昭和の戦前まで、講道館柔道を除けば神道六合流柔術とともに、もっとも全国に普及した武術であった。しかし、両流派ともに戦後はまったく振るわず、神道六合流の正脈は絶たれ、中澤流は筆者の道場だけが全国で唯一稽古を続けている道場となった。

我は左手で敵の左手首を掴む。

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我は右足を敵の前に踏み込み、左手を被る。

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後方に體変換し、敵の腕を屈曲して仰向けに倒す。

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この形は我から仕掛けて取り押さえる掛け手の技で、捕手術の方策である。
by japanbujutsu | 2014-01-25 17:40 | 中澤流護身術 Nakazawa ryu
中澤流護身術 四段 座捕七方式 
第一条 座捕り左方式


敵は左手で座している我の右手首をとる。

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我は左手で敵の左手首を掴み、右膝を敵の前に立てて、両手を振りかぶる。

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我は體を転換して後方に向き、敵の腕を屈曲して仰向けに倒す。

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合気系武道では「四方投げ」と称している技法であるが、中澤流がこの技をすでに大正年間に公刊書で発表しているのは画期的である。
by japanbujutsu | 2014-01-24 21:49 | 中澤流護身術 Nakazawa ryu
中澤流護身術 三段 體返術 
第一条 頭髪返し


初段・二段・三段はそれぞれ12ヶ条ある。中澤流の基本なので、一年が十二ヶ月あるように、十二まで行ったらまた一に帰って繰り返し稽古せよ、という教えである。

敵は右手で我の頭髪を掴む。我は右手で敵の手を押さえる。

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我は左拳で敵の脇腹に当身を入れる。

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両手で敵の小手を返して引き落とす。

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by japanbujutsu | 2014-01-23 17:56 | 中澤流護身術 Nakazawa ryu
中澤流護身術 二段 返手術 
第一条 上げ撚返し


敵は左手で我の右手首を捕る。

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我は右手を返して上げながら、左手で敵の手の甲を捕り、右手を抜いて敵の親指を掴む。

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我は左足を引いて膝を着き、敵の小手を極めて引き倒す。

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by japanbujutsu | 2014-01-22 17:25 | 中澤流護身術 Nakazawa ryu
中澤流護身術礼法・身構法
初段抜手術  第一条 上げ抜き


礼法
上級者は上席、下級者は下席で互いに礼をする。
両膝を着いて両足の爪先を立て、師匠は両指先を畳に付け、上輩は両手を開き、下輩は両手先を寄せて、頭を肩の高さに下げ、静かに敬礼を行う。

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  ※流派の教えもあるが、古来礼法は頭を肩の高さより下げてはいけないことになっている。これは師範席や神前に対して襟中を見せないようにする配慮である。

身構法
中澤流ではこの身構えを「不動體」と称している。右手は體の上部を保護し、左手は體の中部を保護するように構える。右足は軽く浮かす。これは前後左右に体捌きをする便と、下部を保護するためである。腰を屈するのは体の重心を保ち、倒れないようにするための中澤流における口伝である。

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初段抜手術 第一條 上げ抜き
敵は左手で我右手首を捕る。我は右腕を引き上げる。

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肘を上げて抜く。

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初段はこの抜手術十二箇条で成り立っている。
by japanbujutsu | 2014-01-21 19:41 | 中澤流護身術 Nakazawa ryu
古武道に対する世間の誤解

日本でも、海外でも、古武道に対する誤った認識を持つ人たちが大勢いる。

これは、指導する師範が正しい認識を持っていなかったり、いろいろなメディアからの誤った情報に洗脳されてしまっている場合が多い。

この記事を読んでいる人の中にも、以下に紹介するような古武道に対する誤った認識を持っている人たちがたくさんいるのではなかろうか。

記事には次のように書かれている。

そこでふと思ったのが、「これはやるのが難しい」という技について。本来、古流武術においては「やるのが難しい技」ってないはずなのでは?と思うわけです。なにせ、実戦に使うべく練られた技なわけなので、やるのが難しいのでは実戦で役に立たないのでは?と。「やると危険な技」はたくさんあるんですけどね。

古流は武術における戦闘スタイルを決まった動作「形」で表現する武士の身体表現文化である。
それは弱い者、条件が絶対的に不利な者が、強い者、そして条件において有利な者にいかにして勝つのかを身につける「芸術」である。だから武術は武芸とも言う。やるのが難しいのはそのためである。

だから形の中には表現するのが非常に困難なものもある。それを繰り返し修行して身につけるわけである。古流の形の多くは実戦に使うべく練られた技ではない。ここがまず重要である。実戦ではあり得ない想定が形の中に多々存在することで、そのことは容易に判断できる。芸術であるから形に威厳と美しさが要求された。ただ勝てばよいというような西洋式発想は存在しない。

難しいのでは実戦で役に立たないのでは?というのは正にその通りなのである。だから形を修得するのに何年もかかるわけである。免許皆伝まで10年以上かかることも珍しいことではない。

まず、江戸時代の武術は長く続いた泰平な世の中で醸成されたことを知るべきである。むしろ一生の中で実際に人を斬ったことのある武士の方が少ないのではなかろうか。武術は武士の教養であり、学問の一課である。だから武術は武士の場合、藩校で学んだ。

しかし、ここで早合点してはいけないことは、武術がまったく実戦には役に立たないのかというと、そうではない。武術を稽古した者としない者とでは話しにならないほど実力差はある。それは形の中で「技術」を教えるからであり、合理的操作法を学ぶからである。しかし、何度も言うように、その技術を習得するには何年もの歳月を必要とする。
by japanbujutsu | 2014-01-19 17:27 | 武術論考の部屋 Study

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