「ナンバ歩き」考(再)
『月刊秘伝』(4月号)から「ナンバ術で身体革命」という連載が始まった。
今後の展開がどのようになっていくかわからないが、まずは【第1回】の所感を書いてみたい。
まず、連載の第1回ということで、先行研究の経緯や「ナンバ」という言葉の由来から論じてほしかった。
ナンバという言葉は「南蛮」の転訛であることは明らかである。
その南蛮とはどのような意味だろうか。
この場合には南蛮人を指している。
では南蛮人とはだれか。
これは地域的な意味での東南アジアを指しているのではなく、そこを経由して日本にやってくる西洋人を指している。
西洋人は服装に行動を制限するような仕様がないから、大きい動作で自由に歩くことができる。
一方、日本では着物姿に草履、武士は刀を差している。
天気の悪いときや旅行に出かける際には高下駄を履く。
この服装では大きく速く動くことはできない。
日本人は日常において「走る」という習慣もなかった。
ならば西洋人と日本人の歩き方の違いは何だったのか。
それは動作の大小なのではなかろうか。
もちろん大が西洋、小が日本である。
だから「江戸時代までの日本人は誰もがナンバで動いていた」というテーゼは成り立たない。
それが日本人の日常の動作であったなら、そもそも「ナンバ」という言葉の存在があり得ない。
それからもう一つ。
旅をするときの服装は、着物の裾をたくし上げ、両足を露出した軽やかなスタイルでだった。
さらに大きな荷物は馬に乗せての移動が多く、山越えの際にも馬が使われている。
念のため。
(つづく)