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国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

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本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

武術史研究の方法と実践~ビギナーのために~

(この文章は今から約30年前、古流柔術研究専門誌『和儀』に掲載されたものである。あれから30年経った今、世の武術史研究は低調のままである。実技を稽古してもその周辺にある文化遺産=伝書・奉納額・武具・墓碑などの調査を行う者はほとんどいない。この現状は誠に残念であり、古流の魅力を半減してしまっていることに気付く者すら皆無に近い。これから先、たとえ何人たりとも古流の文化遺産に興味を持ってくれる若者がいれば、また、古流伝承のあり方も変わってくるだろうとわずかな期待を抱いている。因みに以下に再掲する文章が書かれたのはインターネットがほとんど普及していない平成初期であることをお含みいただきたい。)

はじめに
これからここに書くことは、武術史研究を推進活性化するための方法についての手引きである。原稿を募集しても、書き方や調べ方がわからなければ一歩も前へ踏み出し得ないからである。筆者の如く浅学非才な者でも何とかなるものであるので、兎に角実践してほしいと思う。文章力も多少は問われるが、恐れず挑戦である。これを元に一人でも多く武術史を探究する同好の士が現れることを筆者は切望している。

第一段階
旧藩地方であれば、必ず古流は存在している。まずはなるべく時間と費用のかからない身近な地域を選定したい。北海道その他、維新前に伝統がない地域はこの点、労力を要するのは避けられない。

第二段階 先行文献の調査
これが重要である。やはり何と言っても先人の研究は、史料が豊富であった時代の所産であるだけに無視はできない。まず調べるのは市史(市誌)、町史(町誌・村史)などである。これらの地方文献を精読して、関連箇所を複写する。特に「兵法・武芸」「体育・娯楽」などの項目がある場合はありがたい。次に人物伝に関する文献に目を通す。意外に武術家の多いものである。市史や町史の中に「人物」の項目があることも多いので見逃してはならない。さらに近世の史料(資料)集があれば、目録により閲覧を依頼する。複写を許可しない図書館が多いが、写真撮影は可能である。写真撮影も許可しない場合は筆写する。

第三段階
ここからは人間相手の調査となるので、礼を尽くしてその目的を話し、協力をお願いする。まず、旧師範家の末裔捜しである。教育委員会で聞いてみるのもよいが、人事異動が激しく、まったく無知の場合も多く、ほとんど当てにならないことが多い。時として役立つのはその地域の寺社である。神主や住職は氏子や檀家を把握しているので、墓さえわかれば現当主を教えてくれる。判明しないときは電話帳で同姓の家に端から伺うしかない。これは慣れれば二十軒ほどの同姓の家があっても、三、四軒の聞き込みで見つけることができる。現当主を探し当てたら、電話で訪問日時を決める。その際、必ず伝書類の有無を確認する。

第四段階 整理
伝書を複写させていただく。写真撮影も必ず行う。その際、師範人の生没年や武勇伝、稽古場や稽古の実態の聞き込みを忘れてはならない。当主が知らなければ近くに住む旧家の古老がこの種の話に詳しい。同時に寺社への奉納額を調べる。

第五段階
後は執筆して投稿である。


以上、一部省略して再掲したが、30年前と今ではかなり状況が異なる。多くの図書館ではレファレンスサービスがあり、調べたいことを伝えれば、掲載文献を教えてくれる。また、困ったことに、最近の神主や住職はあまりにも不勉強で、無知無教養極まりない。旧家の現当主もそのほとんどは戦後の生まれとなり、古い話など知る由もない。しかし、昔も今も調査の王道は足で情報を稼ぐ、これに尽きる。


筆者のもっとも最近の調査は、つい先日行った埼玉県に残る柳剛流と神道無念流の史跡調査である。

中央高速から圏央道を使えば、筆者の住む山梨から埼玉の久喜市まで一時間で行ってしまう。便利な時代になった。


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今後の諸賢のご活躍に期待したい。






(完)

# by japanbujutsu | 2021-06-14 20:38 | 武術論考の部屋 Study
弟子の本分

現在では起請文(武術入門に際して師範に差し出す誓約書)の提出を義務づけている流儀は極めて少ない。

起請文を提出させている流儀を知っているが、実質的な効力はほとんど機能していないのが現実である。

現代の世においては個人の権利・自由を束縛しかねない内容を含む場合があるため、当塾でも取り交わしはしていない。

しかし、現代においても門人として最低限守らなければならない武術稽古上の心得・規範は当然存在する。それは、

一、稽古場において師範の教導は絶対的なものである。したがって、他流の考えや自分の考えを稽古場に持ち込んではならない。

一、技・形を学ぶ上で、勝手な解釈をしてはならない。流儀に伝えられている教えがすべてである。

一、技の効く、効かないを論じてはならない。

一、他流の形や技を持ち込んで稽古したり、示したりしてはならない。

すなわち、師範の指導は絶対的なものである。

形についての是非ではなく、純粋に動きなどのわからない部分を質問することは許される。

武道における所作は武道により流儀により異なる考えがあって当然である。

したがって、「この動きは違うのではないか」とか「左右が逆ではないか」、あるいは「そのやり方では切れないのではないか」など、他流の考えや自己の主観で技や所作の良否を論ずることは厳禁事項である。

こうした弟子の本分を弁えない者、流儀の規律を守れない者は武術の修行はするべきではない。

近世武術の起請文に次の条目がある。

御兵法の義に付、師に対し表裏の別心無之、御差図(指図)を守り、稽古可仕事


弟子の本分_b0287744_14494704.jpg


現代であっても心して稽古に専念しなければならない。





(完)



# by japanbujutsu | 2021-06-04 14:56 | 武術論考の部屋 Study
松代藩文武学校武道会 春の演武会開催

好天に恵まれた五月二十九日(土)、松代藩文武学校武道会第三十回春の演武会が二年ぶりに開催された。


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文武学校槍術所での開催は実に三年ぶり(改修工事のため)であった。

コロナ禍の中での開催であったため、参加者こそ少なかったが、水月塾にとっても久しぶりの演武会となった。

演武会に先立って行われた総会において、筆者は武道会より表彰状を授与された。


松代藩文武学校武道会 春の演武会開催_b0287744_20334600.jpg


これまで共に会の発展に尽力し、共に演武を続けてきた皆様方のご支援あっての栄誉、この場を借りて厚く感謝を申し上げたい。

さて、今回の演武に水月塾からは筆者の他、関西支部長の山根章師範、横浜支部長の吉元恵美師範が参加した。

水月塾の演武は以下のとおり。

無双直伝流和


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穴澤流薙刀


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天道流小太刀


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力信流棒術


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力信流居合


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神道無念流立居合


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秋の演武会での再会を約して散会した。





(完)



# by japanbujutsu | 2021-05-30 20:43 | 演武会・講習会 Seminar
仕太刀の読み

天道流は「てんとうりゅう」と読み、神道無念流は「しんとうむねんりゅう」と読むことは前回お伝えした。

今回は【仕太刀】の読みについて。

みなさん、なんて読みますか。

全日本剣道連盟では「したち」と読んでいます。

諸文献を渉猟してもほとんどが「したち」あるいは「しだち」と重箱読みにしている。

しかし、これは大きな誤りで、正しくは「つかいたち」と読む。

ここに江戸時代の師範に学んだ相伝者が記した覚え書がある。

その中で「仕方」を「つかひかた」と読んでいる(資料ルビ参照)。


仕太刀の読み_b0287744_18063625.jpg


これで「仕」を「つかう」と読むことが判明した。

したがって、仕太刀は「つかいたち」と読むのが正しい。





(完)

# by japanbujutsu | 2021-05-24 18:12 | 武術論考の部屋 Study
「天道」は「てんとう」と読む

無知無教養な者たちが、「神道」を「しんどう」と読んだり、「天道」を「てんどう」と読んだりしていることは何度も述べた。

団体のトップの地位にある指導者はもとより、そこに所属している個人・流儀の関係者がだれも誤りを改めようとしない古い体質にうんざりしている今日この頃である。

香取神道流を「かとりしんどうりゅう」、
神道夢想流を「しんどうむそうりゅう」、
神道無念流を「しんどうむねんりゅう」、
そして、天道流を「てんどうりゅう」と、

無知のオンパレードである。

全日本剣道連盟や全日本居合道連盟からして間違えているのだから、手の下しようがない。

困ったものだ。

日本人の教養がここまで低劣化したのかと思うと情けなくもなる。

新当流の伝書に「天道」を「てんたう」とはっきりルビが振られている。


「天道」は「てんとう」と読む_b0287744_14512134.jpg



(完)



# by japanbujutsu | 2021-05-21 14:53 | 天道流武術 Tento