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国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

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本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

「ナンバ歩き」考(再)


『月刊秘伝』(4月号)から「ナンバ術で身体革命」という連載が始まった。

今後の展開がどのようになっていくかわからないが、まずは【第1回】の所感を書いてみたい。

まず、連載の第1回ということで、先行研究の経緯や「ナンバ」という言葉の由来から論じてほしかった。

ナンバという言葉は「南蛮」の転訛であることは明らかである。

その南蛮とはどのような意味だろうか。

この場合には南蛮人を指している。

では南蛮人とはだれか。

これは地域的な意味での東南アジアを指しているのではなく、そこを経由して日本にやってくる西洋人を指している。

西洋人は服装に行動を制限するような仕様がないから、大きい動作で自由に歩くことができる。

一方、日本では着物姿に草履、武士は刀を差している。

天気の悪いときや旅行に出かける際には高下駄を履く。


「ナンバ歩き」考(再)_b0287744_14525622.jpg


この服装では大きく速く動くことはできない。

日本人は日常において「走る」という習慣もなかった。

ならば西洋人と日本人の歩き方の違いは何だったのか。

それは動作の大小なのではなかろうか。

もちろん大が西洋、小が日本である。

だから「江戸時代までの日本人は誰もがナンバで動いていた」というテーゼは成り立たない。

それが日本人の日常の動作であったなら、そもそも「ナンバ」という言葉の存在があり得ない。

それからもう一つ。

旅をするときの服装は、着物の裾をたくし上げ、両足を露出した軽やかなスタイルでだった。

さらに大きな荷物は馬に乗せての移動が多く、山越えの際にも馬が使われている。

念のため。



(つづく)

# by japanbujutsu | 2024-03-16 06:17 | 武術論考の部屋 Study
枕引(再)


数年前に紹介した柔術渋川一流の鍛錬の一つ「枕引」。

その稽古で使う枕を複数製作した。


枕引(再)_b0287744_20072749.jpg


枕引は甲乙二人が座して向かい合い、親指と人差し指で枕を両側から挟み、引き合う鍛錬法。

渋川一流には「眼潰」(がんつぶし)をはじめとして、この二指で攻撃する技が複数ある。

そのため日常から「挟力」を鍛えるのである。

現在、渋川一流を稽古している者はいないが、これまで中極意まで習得した者は二人いる。




(完)





# by japanbujutsu | 2024-03-14 06:58 | 柔術渋川一流 Shibukawa
武術流儀名の商標登録


いつになったら武術流儀名を商標登録する愚行がなくなるのだろうか。

何度も言うように、武術の流儀というのは、複数の人間に相伝されていくものであり、これら相伝を受けた師範は皆、同等の教授資格を与えられ、且つその資格には上下の差がない。

したがって、これも何度も繰り返すことになるが、古流の武術には免許発行権を独占する「宗家」は存在しない。

私が伝承している流儀にも自称宗家がいるが、私はその宗家から伝書や資格を授けられたことは一度もない。

武術の流儀を商標登録している流儀は、いずれ近い将来、必ず門人同士に諍いが生じ、対立して破滅していく。

そのような流儀に将来のある若い人たちは決して身を置くべきではないと思っている。


武術流儀名の商標登録_b0287744_17481850.jpg





(完)

# by japanbujutsu | 2024-03-12 07:29 | 武術論考の部屋 Study
柔らかい筋肉を作ろう


あらゆる武術にとって必要な筋肉とは「柔らかい筋肉」である。


柔らかい筋肉を作ろう_b0287744_23431169.jpg



大きく(可動域が広く)速く動くためには柔らかい筋肉が必要となる。

柔らかい筋肉は怪我のリスクも軽減できる。

柔らかい筋肉は動いて作る筋肉であり、硬い筋肉は動かず負荷を与えて作る筋肉である。

柔らかい筋肉を理想的に作ることができるスポーツは体操と水泳である。


柔らかい筋肉を作ろう_b0287744_23433102.jpg


双方共に身体の左右を均等に使い、特に両腕を大きく回転させることによって、上半身の筋肉に柔軟性を与える。

その点、球技は利き腕を酷使するため、選手は故障が多い。

筋肉を柔らかくするためには、まず運動の前後に必ずストレッチと、できればマッサージを行うことである。

酷使した筋肉を何もせずに放置しておくと、怪我をしやすい硬直した、そして武術にとっては使いものにならない硬い筋肉をつけてしまう。

私は武術の稽古がない日でもストレッチだけは必ず毎日行っている。

特に念入りにやるのは浅山一伝流の「意の構え」。

さまざまな鍛錬法が伝えられており、特に股関節を柔軟にする。



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これは相撲の「四股」を踏むのと同じ効果がある。




(完)

# by japanbujutsu | 2024-03-10 07:19 | 武術論考の部屋 Study
『武道を知る』所感(最終回)


本書については誤った認識が山のようにあり、その一々を指摘するのも厄介なことなので、今回を以て、とりあえずは筆を置く。

P.113
「この後竹刀稽古は急速に普及し、それは同時に形を柱とするかた稽古(ひいてはかた文化)の衰退でもあったのである。」

執筆者が剣道畑の人間であり、古流のことをまったく理解していないのは、この一文を見ただけで明白である。

竹刀稽古は流儀の形とは別と言っていいほど、独立した存在であり、竹刀稽古が普及したために形が衰退したなどという歴史はどこにもない。

事実、竹刀稽古を積極的に採用した一刀流系統の剣術でさえ、昭和に至るまで、しっかりと伝統の形を受け継いできた。

流儀=形という古流の大前提を知らずして、このような嘘を書くべきではない。

画像は北辰一刀流の正統を受け継ぐ水戸東武館における形演武。


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(完)

# by japanbujutsu | 2024-03-08 06:57 | 武術論考の部屋 Study

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