神道無念流と警視流 Shintô munen ryû & Kêshi ryû
明治時代に制定された警視流居合の二本目に神道無念流立居合から採用された「無双返し」の形がある。
神道無念流に後方の敵を振り返って斬る形は三本目しかないので、その三本目が採用されたことになる。
今、神道無念流の伝書からその三本目の形を抜粋してみる。
第参
右足より三歩進み、左肩より後を見、左へ廻りて右足を踏み込み、抜き付け、左足より進んで右足に斬り、霞んで左足を進めて右足を開き、右方の敵首を斬る
警視流無双返し
右足より前進中、右足が付くとき、廻れ左をなし、右足を出すと同時に刀を抜き、右上に切り上げる(左手は柄を握る)。左足を進め刀を左から頭上に廻して右足を出して正面を斬る。左足を前に出して上段に構え、残心。以下納刀所作略。
警視流にはこの最後の肝心な首を斬る動作が抜けている。警視流は五本の形をすべて同じ理合にしてしまっているため、古流のそれぞれの特徴が薄れてしまっている。神道無念流は抜刀や納刀の所作まで採用されているため、まだ良いと思うが、他の四流儀はまったく原形を保っていないのではなかろうか。