日本における武道の誤り
中学校における武道必修化には大反対である旨、すでに述べた。
中学校の体育で柔道や剣道をやっても、高校へ入って柔道部や剣道部へ入る生徒がほとんどいないのは武道にまったく魅力を感じないからである。
それどころか、多くの生徒は二度とこんなことはやりたくない、とそう思っている。
さて、市中にある個人経営の道場ではどうか。
そこへ通ってくる者はほとんど子ども。
大人は指導者だけ。
しかも親が子どもの送り迎えをしている。
やりたいのは本人ではない。
親がやらせているだけなのである。
礼儀や躾はサッカーや野球だって教えることはできる。
では武道が武道たる所以は何なのか。
それは目先の大会に勝つことばかりを考えている今の柔道や剣道からはほど遠い世界にある。
まず、高校や大学へ行っても柔道や剣道を続けていなければ、武道の本質は語れない。
そして、仕事をもってからも続けて、初めて武道の本質が見えてくる。
しかし、今の日本人はそんなことをしない。
目先の楽しみと利益に直結しないようなことを、大人が好きこのんでするわけがない。
なんでも即席でなければ飛びつかない。
日本人の多くは第二次世界大戦後、「修行」という言葉を実践できない民族になってしまった。
長い修行を通して、精神生活を高揚し、自己の内面を問うような場を避けている。
どこの道場でもほとんどの場合、十年経てば、門人は総入れ替えである。
今の日本に武道を普及させる土壌はまったく存在しない。
誠に残念であるが、これが現実である。