『時代劇・剣術のことが語れる本』の誤りを正す 4
P.26
「最盛期には、その流派は七百を大きく越えていた。そして、それが取捨選択された幕末でも二百余流あって明治維新を迎えている。」
論評
何を根拠に数値を算出したのかわからないが、この書き方では最盛期は江戸中期ということになる。
幕末に取捨選択された理由は一体何なのだろうか。
そして、P.123では、
「江戸時代も中期になると、剣術はその太平のあおりを受けて衰退していく。」
とあり、完全に記述が矛盾している。
江戸の武術は泰平期に全盛を迎えているということをまったく理解していない。
『本朝武芸小伝』は、武術が最盛期を迎えた江戸時代中期((享保元年=1716)の版行であり、これはこの時代に武術がそれだけ庶民から関心を持たれていたということの表れである。
P.28
「この神道流系の兵法は、時代の変遷とともに表舞台から消えていくが、その教えは中条流や陰流系に直接あるいは間接に受け継がれ、現代にいたっている。」
論評
もはや悲惨な認識である。神道流系武術は本流の香取神道流をはじめとして、その分派は星の数ほどもあり、表舞台から消えていくなどという史実はどこにもない。