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国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

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本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

忍術の真実 -義盛百ヶ条- The truth of the Ninjutsu

忍術の真実 -義盛百ヶ条- The truth of the Ninjutsu


忍術は今や欧米で大人気だ。
人気があるのはいいとしても、彼らは忍術の真実も歴史も何も知らない。
柔術と空手の真似のようなことを江戸時代からの古武道だと信じて、黒い空手着に地下足袋を履いて畳の上を飛び回っている。
中には上衣がTシャツの者もおり、必要のない帯を下衣の上に締めたりしている。

約三十年ほど前、まだインターネットなるものがほとんど普及していない時代、欧米で古武道を習いたい者はほとんどこの「忍者教室」に入り、それを日本の古武道と信じて真面目に稽古した。
これらの者は師範クラスになった今でも忍術を武術だと思っているからマインドコントロールは真に恐ろしい。
もはやそれが日本の伝統文化・伝統技術ではないとわかっても、二十年以上も稽古をしてきた者たちはそれを簡単には捨てることができない。
今やヨーロッパはどこの国へ行っても忍者だらけである。

ここに『竊盗(しのび)之巻 義盛百ヶ条』という伝書がある。
この義盛とは、伊勢三郎義盛という者で、かの有名な源義経の配下の武将で、忍歌を残したといわれる伝説の人物である。
その忍歌というのが、画像に示した伝書に記載されているものである。

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まず、忍術というのはスパイ(忍び)が行う盗聴術、情報収集術で、身を窶して敵陣に侵入し、敵方の情報を獲得する術であって、武術とはまったく異なる範疇に属している。
忍びが忍びの術を学ぶ目的で市中の道場に入門することなど100%あり得ない。
だいたい武術道場で忍術を教えたら、そこの門人はすべて「忍者」として登録されてしまい、役をしなくなる。
時に武術流儀に忍術が含まれていることがあるが、それは「外物之伝」であり、武術の技術ではないから勘違いしてはいけない。
また、忍者が骨指術だとか骨法などという体術を江戸時代に伝承していた事実は存在しない。
伊賀者次席として江戸市中や城中で警備をしていた者たちも、明治初期の維新変革期にその役目を解かれて、この世から「忍び」は抹消された。

実際の忍びは日常、別の職業に就いており、戦が始まるとその職権を利用して諸国を廻れる者たちで、甲斐の武田家では神主を忍びとして利用した。神主はその門葉に連なる氏子・信徒に御札を売るため諸国を行脚する特権があり、情報収集に長けていた。スッパというのがそれである。

明治末期から大正時代に創られた講談がネタとなり、これを脚色して甲賀流を名乗る人が何人もいた。
私の住む山梨にも小林小太郎という忍者がいたが、やることは大道芸の類であり、名前も顔も知られている時点でもはや忍者ではあり得なかった。

忍者が武術をやってもし敗北すれば、一軍の策略はすべて水の泡である。

タイトルの義盛百ヶ条なるものは、忍びの心得が書かれたもので、その成立はずっと時代が下ってからのことであり、義盛なる者が記したものではない。
これについてはその研究家が三重大学にいるようなので、ここでは触れないことにする。
by japanbujutsu | 2015-09-07 22:08 | 秘伝書の部屋 Secret densho

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