本科の十手
現在、わが水月塾の会員諸氏の中には残念ながら武具に興味を持ち、蒐集している同好の人がいない。
武具にも興味をもっていれば、真贋の見分け方など、いろいろと教授してやることができるのだが。
武術が好きであるならば、武具にも興味を持って欲しいところではある。
武具は武術と同じほど奥の深い、味わいのある世界なのであるから。
さて、今回は本科の十手を見てみよう。
十手や鎖鎌には実に贋物が多い。
まず、十手の場合、鉄味を見ること。
これは経験がものを言う。
いわゆる 「だまされて覚える」 というやつ。
偽物を買わされたら、それは勉強代だと思え、とはよく言われること。
まさにそのとおりである。
和鉄の鍛えによる鉄物武具はきれいに黒錆が付く。
赤錆が付いても細かく、洗浄すればすぐに落ちる。
そして重要なのは鍵の接続部分。
溶接はアウト。
しっかりと穴を穿ち、鍵が棒身を貫通していること。
そして、その鍵が厚いこと。
房環が涌かし付けになっていること。
など、いくつかの注意点がある。
ここに紹介したものはやや長めで、房環はなく、柄尻が天正拵のように広がっている。
持ち手が十手から外れないための工夫である。
何の変哲もないシンプルな一品であるが、鉄味は最高である。
(完)