習字
門弟に伝書を差し出すとき、代書してもらってはいないだろうか。
もしも、そんなことがあろうことなら、その伝書は 「ニセモノ」 である。
他人に代書してもらい、判子屋に判子を作ってもらう。
そんなことは誰にだってできる。
つまり伝書の 「ニセモノ」 を作るのは簡単である。
だから師範たる者、しっかり書を学び、伝書は自筆して門弟に差し出すのが本意である。
自筆はその師範本人だけのものであり、それこそ 「ホンモノ」 である。
筆者とて人に誇れるような手ではないが、それでも日常、つねに運筆の稽古をし、伝書は必ず自筆している。
いつも書いているのは 「いろは歌」。
これを稽古していると古文書を読むときにも変体仮名に強くなる。
だからいろいろな字体で書くようにする。
仮名は柔らかくて女性的で、なめらかな線を書く稽古には最適である。
皆さん、一度騙されたと思ってやってみてください。
面白くないと思ったらお終い。
面白いと思ったらしめたもの。
(完)