袴の襞のこと
袴の襞について、何を見ても同じ内容のことしか書かれていない。
曰く、
袴の襞 (ひだ) は前に五本、後ろに一本あるが、前の襞は儒教の五常、すなわち、仁・義・礼・智・信 (人間が守るべき五つの徳=思い遣り、人助け、礼儀、知識、信頼) または、五倫、すなわち、義・親・序・別・信 (君信の義、父子の親、夫婦の別、長幼の序、朋友の信) を表しており、後ろの襞は忠義一如、すなわち、心のない誠の道を表したものだとされる。
残念ながら、そのいずれも出典が示されておらず、何を根拠に述べたものか判然としない。
そうは言うものの、筆者も今は、それを調べる余裕はない。
ネットは恐ろしい。
こじつけや誤解釈、あるいは創作した理屈が瞬く間に拡散してしまう。
しかし、筆者がかつて師匠から伺ったことは、そのような単なる数合わせとは違っている。
その前の五本を見ると、右側に二本、左側に三本ある。
それは、
二本は陰を示し、三本は陽を示している。
これを知れば、それより先の解釈は武術を長く稽古している諸賢にはお解りいただけると思う。
なお、とある著名な剣道家は 「袴のひだは左足側に三本、右足側に二本の計五本ありますが、これが米・麦・ヒエ・粟・豆の五穀を表している」 という。驚くべきことに、袴が襞数が農民起源になってしまっている。出典を知りたい。
(完)