本覚克己流 小林清次郎氏
長きにわたる我が武術人生は、今は亡き多くの名人、達人との交誼の歴史でもある。
今からおよそ三十年前に交誼のあった青森県弘前市の小林清次郎氏もその一人。
本覚克己流和、最後の継承者であった。
小林氏はその師、大津育亮氏より膨大な古流を継承していた一人であり、その身に覚えの武術を書籍にまとめようと試み、筆者に協力依頼の連絡をくれた。
その計画は実現しないまま、氏は黄泉の客となり、津軽の武芸は卜伝流剣術と笹森氏の流儀を残して全ては消滅した。
伝統文化、伝統芸能で後継者がいないことほど残念なことはない。
時代が変わり、古いことに興味を示さなくなってしまった地方公共団体や教育機関にも大きな責任がある。
葉書には米粒よりも小さな文字でビッシリと書き込んであり、読むのにも一苦労した記憶がある。
かなわない夢ほど辛く悲しいものはない。
(つづく)