裏技
わが国際水月塾武術協会の制定柔術、甲陽水月流には形の本体六十箇条と、その形を打つのに必要な理合・感覚・間合い・呼吸・タイミングなどを養う基本練習手六十箇条があり、さらに本体の六十箇条は表・裏・変化・居捕と四変化し、総計で三百箇条となる。
それに道具を用いる形が百数十箇条ある。
さて、先日の稽古では柔術の裏技を教伝した。
裏技は先ず受が捕を攻撃し、捕が表の技を掛けてくるのを受が返す技である。
この裏技には私が若い頃、広島に渋川一流の修行に通っていた当時、福山にお住まいだった佐分利流槍術・不遷流柔術を修めていた田口善三郎氏から学んだ不遷流の寝技が多く採用されている。
不遷流の乱取りには、自ら倒れ込んで敵を巻き込む技や、下から足を敵に引っかけて倒す技が多くあり、そのまま関節技や絞め技に移行する。
田口氏からは形ではなく、この乱取りの技を教えていただいた。
氏とのご縁は、氏の生家が近世初期に一伝流居合を伝えており、その伝書を拝見させていただくために訪問をしたことによる。
保管されていた武具のいくつかもお譲りしていただいた。
制定柔術初伝逆捕二本目「閻魔」の裏技も不遷流からの採用である。
まず我が敵を取り押さえ、それを敵が腕逆に極めるのを、我は足を掬って倒し、そのまま両手で襟締めに取る。
柔術はこの裏技や変化を学ぶことで、より技の理解が深まり、また体を練る(柔術体をつくる)ことができるようになる。
(完)