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国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

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本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

カテゴリ:武術論考の部屋 Study( 318 )

後継者

武術のみならず、日本の伝統文化、伝統芸能の多くが昭和から平成の世に姿を消した。

武術の場合、江戸時代に門下何千人ともいう隆盛を誇りながら、現代の世に消えていく憂き目に合った流儀数知れず。

北辰一刀流兵法はわずかに一系統が水戸に残り(小樽伝は内容を改変)、

天神真楊流柔術はわずかに二系統、

森戸系浅山一伝流は断絶、

柳剛流はわが協会と伊勢の二系統、

これらはいずれもかつては江戸を中心に千単位の門人を擁した巨大流儀であった。

しかしそれは師範一代の栄誉でしかないのだ。

結局、門人が何千人いても、その中から後継者となる有為な人材が出なければ、流儀は滅亡する。

枯れ木も山の賑わいとはいうものの、武術において枯れ木は後継者とはなれない。

三州吉田藩の一心流柔術。

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講道館に先立つこと十数年、すでに乱捕を体系化して伝えていた優れた流儀も昭和の初年に最後の伝承者が他界して消えた。

後継者、今の世に獲得するのがもっとも困難な人材である。






(完)
by japanbujutsu | 2019-02-20 07:10 | 武術論考の部屋 Study
武芸十八般を学べ

競技武道の場合、
柔道と剣道を両方やる者はまずいない。
空手と柔道をやる者もまずいない。
競技武道はスポーツだから、サッカーと野球、あるいはバレーボールとバスケットボールを両方やる者がいないのと同じ現象である。
それは一向に構わない。

しかし「武術」は違う。

剣術家(この場合は剣道家を含めて)の場合、居合や杖はやるが、柔術をやる者はほとんどいない。
そんなことではだめである。

武芸十八般、特に剣術・柔術・居合・棒術(または杖術)・薙刀(または槍術)・鎖鎌(または十手)、小太刀(または二刀)ぐらいは一通り熟すことができなければだめである。

すべての武術には共通する理合があり、それらは相互に連関して、それぞれの術を高める働きをしている。
すなわち、剣術をする者が柔術をして、初めて剣術の有為を悟るということである。

総合武術の価値はそこにある。

水月塾の海外セミナーでは、一度に数種の武術を指南している。

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体験は悟りの窓口であり、そこで何かを感じた者がその武術の修行を深めれば良い。

とにかくやってみることである。





(完)
by japanbujutsu | 2019-02-12 07:34 | 武術論考の部屋 Study
欧米のヘンテコ道場名

欧米の武道場には笑うに笑えない、悲しすぎる道場名がたくさんある。

どうして日本の指導者は無知な彼らに対して、しっかりと根本的なことから指導してやらないのだろうか。

その悲惨な道場名のいくつかを列挙すると、

①Hagakure dojo 多分、切腹の仕方を指南しているのだろう。
②Sale dojo 何を安売りしているのだろうか。
③ONDORI dojo 闘鶏所
④Zentai dojo 何の全体なのだろうか。
⑤Sakura dojo ソメイヨシノの育て方と花見の仕方を指南しているのだろう。
⑥Naikan dojo 天真一刀流の極意だけを修する道場
⑦Ken tsuru dojo 賢い鶴を飼育する鳥センター
⑧Tasai dojo いろいろなことができなければ入門ができない道場
⑨Soyakaze dojo 謎の風が吹き込む開放的な道場
⑩Ninja dojo 全員身元がばれてしまう使い物にならない忍育成所。

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賢鶴道場:立派な道場なのに鶴の飼育所とはなんてかわいそうな

日本の先生方、どうかしっかり教えてやってください。
見て見ぬ振りはいけません。






(完)
by japanbujutsu | 2019-02-10 07:03 | 武術論考の部屋 Study
形の数え方

武術形の数え方のもっとも一般的なものは、目録通りの順番を言う場合、一本目、二本目・・・

そしてランダムに抽出して形の数を言う場合は、一手、二手・・・

しかし、捕縄や柔術では、一組、二組という言い方も昔はよく使われていた。

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捕縄ではさらに一筋、二筋という言い方もある。

ところで居合は何というか。
これが現在はほとんど使われなくなってしまったが、一腰、二腰・・・という。
最初から数えるときには「いちのこし」「にのこし」と数える。

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日本のものの数え方は武術の世界にあっても変則的である。






(完)
by japanbujutsu | 2019-02-06 07:43 | 武術論考の部屋 Study
女性用の稽古薙刀と杖

『写真学筆』 に女性用の稽古薙刀と杖が描かれている。

これを見ると随分と細くて短いことがわかる。

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絵であることを差し置いても、現在行われている 「なぎなた」 の稽古薙刀よりは明らかに軽量であろう。

これでは必然的に小手先だけの技しかできなくなってしまう。

戦時中に小学生が使っていた薙刀のようである。






(完)
by japanbujutsu | 2019-01-29 07:53 | 武術論考の部屋 Study
真っ向斬り付けと拳の鍛錬

引き続き、『写真学筆』から今回は居合における斬り付けの鍛錬と柔術における拳の鍛錬について見てみたい。

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居合の真っ向斬り鍛錬道具に用いているのはサンドバッグのようなものである。
厚い皮の中には砂か大鋸屑か、あるいは襤褸切れが詰めてあるのかも知れない。
居合刀は恐らく2尺8寸~3尺ほどの長寸刀で、刃引きしてあるのだろう。
試し切りばかりではなく、こうした切れない物に向かって手の内を練る稽古の方が、居合の稽古としてははるかに有効だと思うのだが。

次にその右に描かれている右拳を振り上げた場面の絵。
床に置いてあるのは竹のように見えるが、かなり扁平である。
拳を鍛えるには竹は固すぎる。
果たしてこれは何だろうか。
失われた文化を再現するには、それを解説した文書がなければできない。
日本人は多くの文化を喪失してしまった。





(完)
by japanbujutsu | 2019-01-25 07:38 | 武術論考の部屋 Study
女性の稽古着と襷

『 写真学筆 』 の挿絵を見ると、特に女性用の武術稽古着というようなものはなかったことがわかる。

床を引きずるほど裾の長い着物に、紐のような細い襷を掛けて、薙刀の稽古をしている。

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もちろん袴は着けていないし、帯は幅が広く、背で大きく花結びにしている。

髪も簪を差して結ったままである。

まったく機能的ではない日常の姿のまま、稽古をしていたことがわかる。





(完)
by japanbujutsu | 2019-01-23 07:48 | 武術論考の部屋 Study
一般的な襷の掛け方は武道ではタブー

普通見られるような口で端をくわえておいて掛ける方法は「女中掛け」、あるいは単に「女掛け」と言って、武士の間では嫌われた。
下のイラストがその女中掛けである。

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今、そのような作法が武道においては誤りであることを知る者も少なく、武道人でも平気で女中掛けをしている。

武家には武家の 「男掛け(侍掛け)」 がある。

武道において身につけるものを口にくわえるなどの無作法は言語道断である。

先日、都内の寄席に行ったら、一人の出演者が踊りを始める際に、襷を男掛けにして、思わず感動した。

わが流儀以外にもしっかりと武家の故実が伝わっていたのである。






(完)
by japanbujutsu | 2019-01-21 07:03 | 武術論考の部屋 Study
セミナーの教授内容

海外で武道・武術のセミナーを開催する場合、ただ技や形の講習にとどまらず、できれば武術の持つ文化的分野の講習も行いたい。
特に、古武道の場合には、絶対に座学が必要であると感じている。
古武道の何たるかもわからず、ただ技だけを稽古する場合がほとんどなのではなかろうか。
これはわが日本の古武道の稽古も同じである。
だから古武道の肝心要であるところの精神性や哲学、技の事理、有職故実から服飾、武具、伝書にいたるまで、古武道の幅広い内容を正しく海外にも伝える必要がある。
それにはまず、日本の師範が正しい知識を持つこと。
日本の稽古場でも座学は必須であろう。
ヨーロッパの道場が動物園のような名前を付けても黙認しているようでは指導者として失格である。
古武道の講習会で「オッス」などと返事をしている者に指導もできない師範は、セミナーなどしない方がよい。

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今回のヨーロッパセミナーでも袴の帯を十文字に結んでいる者はすべて訂正させた。
武術の稽古・演武は冠婚葬祭ではない。






(完)
by japanbujutsu | 2019-01-17 07:44 | 武術論考の部屋 Study
形の崩れ

海外の会員がSNSで公開している力信流剣術の形を見て 「これは再指導しなければ」 と、今回のセミナーで矯正した。

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形は師範から弟子へ、そして弟子から孫弟子へと伝えられていく間にどんどん変形・変質していくことを今回改めて実感した。

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これは師範が弟子に正確に指導していなかったことも一因であり、自ら反省しなければならないことでもある。
流儀が分派すると、各師範の個性 (悪く言うと癖) が弟子に流れ、同じ流儀であるのに趣のまったく異なる形が伝えられていく。

剣術の場合、特に手の内や間合い、そして斬るときの刀の角度、目付から掛け声に至るまで、正確に伝承しないといけない。
ただ形を真似しているだけでは剣術の本質など理解できるはずもない。

関口流抜刀など形の変質が特に顕著であり、各県の道場でまったく異なった稽古をしている。





(完)
by japanbujutsu | 2019-01-11 07:36 | 武術論考の部屋 Study