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国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association

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本会が伝承している武術流派と古武道全般の技法・歴史・文化などを解説します。文章・記事・写真の転載は固く禁止します。

歩行にルールなし

いままで見てきたように、江戸時代には道路の歩行にルールなどというものは存在しなかったことがわかる。
今回、紹介する挿絵も職業雑多な者たちが広い道路を往来しているが、そこにルールらしきものは見当たらない。

歩行にルールなし_b0287744_1844232.jpg

荷担ぎの横に二刀差しの人物が描かれているが、どう見ても武士には見えない。

諸賢においては、しっかりと文献を精査した上で、根拠となる資料を示し、左側通行なり、右側通行なりを述べてほしい。




(完)
# by japanbujutsu | 2018-02-06 18:44 | 武術論考の部屋 Study
橋上の歩行

武術形の想定を説明するとき、よく引き合いに出されるのが橋を渡る際に、反対側から敵が歩いてくる想定。

橋の上の歩行_b0287744_20263774.jpg

この想定にはいくつかのパターンがあり、狭い路地を通行するときにも同じ状況となる。
その想定とは、
一、対面してお互いに前を譲らない場合
二、お互いが最初から左側通行で行き違う場合
三、お互いが最初から右側通行で行き違う場合
四、対面する直前でどちらかが前を譲る場合
の四つのパターン。

一の想定は、居合や剣術の場合、そのまま斬り合いになるか、柔術の場合には胸襟を掴んできたりする。武術の想定としてはもっとも普通な想定である。
二の想定の形には、天道流剣術の「辻切」や力信流棒術の「引き別れ」があるが、この想定では本来、喧嘩は生じないはずである(鞘がぶつからないため)。
三の想定の形は、古流にはほとんど存在しない。それはこの想定が武士の生活規範に反するために、そのような想定は考える必要がないということなのだろうか。

ところが実際に橋の上を歩く人たちを描いた江戸時代の絵図では、左側も右側もない。

橋の上の歩行_b0287744_2026585.jpg

むしろ武士には禁じられている右側通行で描かれている感もある。
今後の考察が望まれる。






(つづく)
# by japanbujutsu | 2018-02-04 17:47 | 武術論考の部屋 Study
人混みの中での侍作法

祭りや市場など人混みの中を歩くとき、いったい侍は刀をどうしていたのだろうか。
そんな疑問を解決する挿絵がある。
下の絵図を見てみると、人混みの中では大刀を脱刀して左手に持っている。

人混みの中での侍作法_b0287744_19442018.jpg

やはり帯刀のままでは周囲に迷惑であるし、自分自身にとってもまた邪魔である。
人混みの中では町人は武士の近くに寄るのを避ける、などというのは明らかな間違いである。





(つづく)
# by japanbujutsu | 2018-02-02 17:37 | 武術論考の部屋 Study
歩行の秩序と女侍

江戸の絵師は当然、当時の風俗や慣習を承知の上でその日常の様子を描いている。
それは例えば、現代の絵師が道路を走る車を描く場合、当然のことながら左側通行として車を描くはずである。

ところがである。
実際に江戸時代の町の様子を描いた挿絵を見ると、一般的に言われているような左側歩行などという規制はまったくと言っていいほどみられないことに気づく。

歩行の秩序と女侍_b0287744_20382316.jpg
むしろ上の絵図では右側通行になっていることがわかる。
日本の道路が左側通行なのは 「侍のルール」 が由来、などという盲目的な俗説は信用すべきではない。
挿絵で見ればわかるように町の道路は身分混交である。
武士がいれば、百姓もおり、商人がいれば、僧侶もいる。
日本の身分が武士だけであるならば、説得力はあるが、このような身分混交の場において 「侍のルール」 「武士の規範」 なるものが適用されるのだろうか。
右側通行では互いの刀の鞘がぶつかるから左側通行になったのだというが、侍の鞘は帯刀していない者にだってぶつかるのである。

また、下の図の右側を見ると、一刀差しの女性あり、二刀差しの女性ありで、いわば女侍が普通に町中を闊歩していたことがわかる。

歩行の秩序と女侍_b0287744_20415413.jpg

人混みの中ではルールなどまったく無用である。
このことについては次回にさらに詳述してしたいと思う。







(つづく)
# by japanbujutsu | 2018-01-31 17:43 | 武術論考の部屋 Study
十手は捕方の専有物ではない

柔術の流儀には十手や捕縄を含まない素手に特化した流儀もある。
天神真楊流なども小太刀は使うが十手は使わない。
起倒流、関口流などの雄流には道具を使わないものも少なくない

一方、やはり地方の総合武術では柔術・捕手を主体として様々な道具を用いる流派が多い。
十手も武術の一般としてこれを伝える流儀は多くある。
しかし、筆者が学んだ中では渋川一流と甲州陣屋伝捕方武術にあるだけである。

それではその十手。
武術で稽古をする以外では、それをだれが日常的に所持していたのだろうか。
一般には捕方 (与力や同心) が占有する物と思われている。
ところが意外にも火消しが十手を持つことがある。
火消しといえば「鳶口」 であるが、普段は十手を所持していることはあまり知られていない。
今回は、二つの火消しに関する資料を紹介する。
一つは十手を持っている写真

十手は捕方の専有物ではない_b0287744_23553129.jpg

もう一つは鼻捻を持っている写真

十手は捕方の専有物ではない_b0287744_2355492.jpg

いずれも幕末から明治初期に撮影されたもの。

指揮棒としての役目をしたのだろうか。





(完)
# by japanbujutsu | 2018-01-29 17:34 | 武術論考の部屋 Study

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