『養生一言草』(一)
今回から数回にわたって『養生一言草』に掲載されている武芸の挿絵を紹介する。
本書はかなり昔から探していたのであるが、今般ようやく入手することができた。
『養生一言草』(八隅景山著、葛飾北秀画(北斎の弟子)、天保二年(1831)発行)は、人の一生を養生の立場から論じる中で、子どもの遊戯を養生と言う。
幼稚の遊戯はすべて天地の道、遊びをなすは「養生のはじめなり」。
また、各種武芸の身体的効果も強調し、相撲や舞踊も奨励する。
江戸後期の養生論は、延命や長寿より健全を目標とし、日々の暮らしの中の身心の調和に価値を置いた。
本書は特に、人間の発達に応じた教養や養生の関係についても述べているが、「生活の病」にかからないための方法を説いている点で注目される。
初回の今回は、武芸の中では今日もっとも人気のない騎射・水練・水馬から紹介する。
騎射図を見ると、二刀差しのまま乗り、その二刀も太刀佩き(刃が下向き)になっていないことがわかる。
普通、馬上で帯刀する場合、鐺が馬にぶつかって邪魔になるので、太刀佩きで乗るのが通常であると巷では思われている。
しかし、この図ではそのような処置はなされていない。
また、馬術でも特に「水馬」を独立させて延べているところが面白い。
(つづく)